セッション情報 シンポジウム2

タイトル S2-005:

消化管悪性リンパ腫の臨床的検討

演者 西村 宏達(福岡大学 医学部 第三内科)
共同演者 江口 浩一(福岡大学 医学部 第三内科), 青柳 邦彦(福岡大学 医学部 第三内科)
抄録 【目的】近年、胃MALTリンパ腫に対するHelicobacter pylori除菌療法の有効性や、手術療法と化学療法・放射線療法などの非手術療法の成績に差がないことより、消化管原発悪性リンパ腫の治療は非手術療法へと移行してきている。一方、全身性悪性リンパ腫の約20%以上に消化管浸潤を認めることから、非手術例においては消化管原発悪性リンパ腫と全身性悪性リンパ腫の区別がなくなる傾向にある。また、悪性リンパ腫は臓器特性を有することより、当科における消化管悪性リンパ腫の臓器別臨床的検討を報告する。【対象・方法】1989年1月から2002年8月までに福岡大学病院消化器科で施行した消化管検査において消化管悪性リンパ腫と診断された77例を対象に、病変部位、肉眼型、組織型、病期分類、治療、予後について検討した。【結果】男性47例、女性30例、平均年齢は62.7歳(34-86歳)、平均観察期間は700日であった。病変部位は胃49例、小腸14例、大腸14例で、肉眼型では胃で潰瘍型が多く、小腸・大腸悪性リンパ腫では隆起型が多かった。臓器別好発部位は胃は中部、小腸は回腸末端、大腸は盲腸であった。肉眼型は表層型12例、隆起型30例、潰瘍型27例、MLP型8例で、組織学的には新WHO分類でdiffuse large B-cell lymphoma 35例、follicular center lymphoma 6例、mantle cell lymphoma 4例、MALT lymphoma 19例、Burkitt lymphoma 2例、T-cell lymphoma 11例であった。臨床病期はstage I 24例、stage II 11例、stage III 12例、stage IV 30例であった。部位別の完全寛解率/死亡率は胃、小腸、大腸でそれぞれ55.1%/24.5%、28.6%/14.3%、28.6%/57.1%であった。mantle cell lymphomaの死亡率は75%であった。胃悪性リンパ腫のstage I,IIにおける完全寛解率は、手術群、非手術群でそれぞれ100%(8/8)、75%(14/16)であった。また、胃MALTリンパ腫に対するHelicobacter pylori除菌療法の寛解率は66.7%であった。【結論】予後は、部位別では大腸、組織別ではmantle lymphomaが最も不良であった。治療への反応には臓器差があり、胃、小腸、大腸の順に良好であった。胃悪性リンパ腫のstage I,IIにおける手術療法群と非手術療法群では寛解率に有意差はなかった。
索引用語 消化管悪性リンパ腫, MALTリンパ腫