セッション情報 一般演題

タイトル 74:

腸結核穿孔に対し緊急手術を施行した一例

演者 梁井 公輔(九州大学 医学研究院 臨床・腫瘍外科)
共同演者 吉川 雄一郎(九州大学 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 本山 健太郎(九州大学 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 植木 隆(九州大学 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 水元 一博(九州大学 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 壬生 隆一(九州大学 医学研究院 臨床・腫瘍外科), 早川 航一(九州大学医学部附属病院 第一内科), 姫路 大輔(九州大学医学部附属病院 第一内科), 八尾 隆史(九州大学医学部 病理学教室第二講座)
抄録 今回我々は腸結核穿孔に対し緊急手術を施行した一例を経験したので報告する。症例は58歳女性。慢性関節リウマチ、多発筋炎、間質性肺炎に対し当院第一内科でステロイド内服などの外来加療中であった。既往歴として、53歳時に子宮頸癌に対し、試験開腹術施行、その後化学療法、放射線療法施行されていた。肺結核の既往はなかった。2002年8月12日夕食後に腹痛、嘔吐出現、8月13日午前3時同科救急外来受診、緊急入院となった。体温摂氏40度、腹部全体に圧痛を認めた。血液検査ではWBC6810(好中球89.2%)、CRP3.34と炎症所見は軽度であった。立位腹部単純写真上niveauを認めたが、明らかなfree airは認められなかった。腹部造影CTでは肝表面等にfree air、腹腔内に中等度の液体の貯留を認め、消化管穿孔が強く疑われた。同日手術目的で当科転科となり、緊急開腹術施行した。開腹すると腹腔内には多量の混濁した腹水と膿苔の付着を認め、汎発性腹膜炎の所見であった。検索すると回腸末端より120cm口側の回腸の腸間膜付着側に径2mmの穿孔を認めた。同部位以外の腹腔内上下部消化管には穿孔を認めなかった。穿孔部を含む30cmの回腸を切除し、回腸回腸端端吻合を行った。腹腔内を生理食塩水で洗浄し、Penrose drainを留置した。切除標本を観察すると、3cm×2cmのほぼ全周性の輪状潰瘍を認め、潰瘍底に径2mmの穿孔を認めた。他の粘膜面に潰瘍は認めなかった。腸管壁は全長にわたり浮腫をきたし腸間膜も肥厚していた。病理学的検索により病変部に乾酪壊死を伴う類上皮肉芽腫を認め、Ziehl-Neelsen染色では抗酸性桿菌が多数みられ、腸結核と診断された。腸結核は多彩な病状を示すが、腸管壁の深部方向には進展しにくいとされており、腸結核の穿孔は2~7%と比較的まれである。本症例のように易感染状態の患者における消化管穿孔の鑑別診断としては、腸結核も念頭に置く必要があるものと考えられた。
索引用語 腸結核, 小腸潰瘍