セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
278:嚢胞腺癌との鑑別が困難であった肝右葉無形成に伴う胆管細胞癌の一例
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演者 |
林 晃史(佐賀医科大学付属病院 一般・消化器外科) |
共同演者 |
北原 賢二(佐賀医科大学付属病院 一般・消化器外科), 阪本 雄一郎(佐賀医科大学付属病院 一般・消化器外科), 下西 智徳(佐賀医科大学付属病院 一般・消化器外科), 平野 達也(佐賀医科大学付属病院 一般・消化器外科), 中房 祐司(佐賀医科大学付属病院 一般・消化器外科), 宮崎 耕治(佐賀医科大学付属病院 一般・消化器外科) |
抄録 |
今回我々は嚢胞腺癌との鑑別が困難であった肝右葉無形成に伴う胆管細胞癌の一例を経験したので報告する。 症例は、71歳・男性。平成14年4月末より心窩部痛出現し、近医受診。精査にて胆管細胞癌を疑われ、6月18日当科紹介・入院となった。入院時身体所見では、貧血・黄疸は認めなかったが、心窩部に軽度の圧痛を認めた。血液検査所見では、T-bil.は正常上限(1.4)であったが、胆道系酵素は著明に上昇(ALP:1637, γ-GTP:905)しており、AST・ALTの軽度上昇も認めた。また、腫瘍マーカーはCEA:9.0、CA19-9:1217、及びDUPAN2:1200と高値を示したが、AFP・PIVKA-IIは正常範囲内であった。画像所見では、CT・MRIにて肝右葉の無形成および左葉肝内胆管の拡張を認めた。特にS4で肝内胆管の拡張が著しく(嚢胞状に拡張)、中枢側にはlow density areaが認められ、胆管細胞癌が疑われた。また、胆嚢・総胆管・肝内に結石を認めた。ERCPでは、右肝管は存在せず、B4分枝に軽度の狭窄が認められたものの拡張は軽度であり、CT・MRIで認めた嚢胞状の部分は造影されず、胆管との交通は明らかでなかった。血管造影では、右肝動脈・門脈右枝は欠如していた。以上より術前診断として1)胆管細胞癌および肝内結石とそれに伴う末梢側胆管の拡張、2)嚢胞腺癌、3)肝右葉無形成と肝内結石に伴う肝内胆管異常、の3つが考えられた。7月1日肝内側区域切除術施行。肝右葉は無形成であり、内側区域には多房性嚢胞性病変を認めた。また、明らかなリンパ節腫大は認めなかった。病理組織学的診断は、胆管細胞癌および肝内結石症であった。術前ERCPにて造影されなかった嚢胞状の部分は胆管であり、結石が嵌頓したために嚢胞状に拡張したものと考えられた。 肝右葉無形成は稀なanomalyであるが、慢性肝炎・門脈圧亢進症・肝内結石症・胆道系悪性腫瘍などの原因となりうる。今回我々が経験した症例においても、右葉無形成が発症に少なからず影響を与えたものと考えられる。また本症例では、肝内結石の存在による胆管交通の途絶が嚢胞腺癌と胆管細胞癌の鑑別を困難にしていた。 |
索引用語 |
胆管細胞癌, 肝右葉無形成 |