抄録 |
症例:54歳女性。主訴:易疲労感。生活歴:飲酒、喫煙なし。家族歴に特記事項なし。既往歴:1983年アレルギー性鼻炎、1985年流産した際、大量出血し輸血、1993年豊胸術(シリコン注入)、1996年特発性拡張型心筋症の診断、2001年甲状腺腫。現病歴:1996年、胸部違和感を自覚するようになり、心電図にて心室性期外収縮(max 3連発)を指摘され、当院循環器内科を紹介受診。この時はHCV抗体は陰性だった。精査にて特発性拡張型心筋症の診断。内服加療(βblocker)を受け、症状は改善していた。2001年4月甲状腺腫のため、近医を受診しチラージンSの内服を開始。同年6月頃より易疲労感が強くなり、7月の血液検査で肝機能異常(AST 173 IU/l , ALT 275 IU/l)を指摘され当院内科を紹介受診となった。当科受診時、HCV抗体が陽性化しており、ANFも陽性であった。現症:貧血、黄疸なし。肝脾触知せず。検査成績:TB 1.0 mg/dl , AST 173 IU/l , ALT 275 IU/l , ALP 470 IU/l , LDH 499 IU/l , TP 9.0 g/dl(γglb 31%), ANF 640倍(diffuse) ,抗DNA抗体 9.8 IU/l , 抗平滑筋抗体 80倍, 抗サイログロブリン抗体 10倍, 抗ぺルオキシダーゼ抗体320倍, FT4 0.85 ng/dl , TSH 25.08μIU/l , HCVAb 4.4 , HCV RNA (-) 肝生検:慢性活動性肝炎。門脈域に高度の慢性炎症細胞の浸潤と中~高度の線維化を認める。浸潤細胞はリンパ球が主体で形質細胞は見られない。一部にロゼット形成を見る。以上、HCV抗体陰性であった女性が、5年後に肝機能障害を来たし当科を紹介受診された。この時にはHCV抗体が陽転化しており、抗核抗体、抗平滑筋抗体も陽性でγglbも31%と高値であった。肝障害の原因としてC型肝炎ウイルス感染と自己免疫性肝炎の鑑別の際に注意を要すると思われた症例を経験したため、若干の考察を含め報告する。 |