共同演者 |
山内 靖(福岡大学 医学部 第二外科), 淡河 治(福岡大学 医学部 第二外科), 岩谷 泰江(福岡大学 医学部 第二外科), 野田 尚孝(福岡大学 医学部 第二外科), 久米 徹(福岡大学 医学部 第二外科), 星野 誠一郎(福岡大学 医学部 第二外科), 馬場 美樹(福岡大学 医学部 第二外科), 酒井 憲見(福岡大学 医学部 第二外科), 前川 隆文(福岡大学 医学部 第二外科), 山下 祐一(福岡大学 医学部 第二外科), 白日 高歩(福岡大学 医学部 第二外科) |
抄録 |
今回我々は、特発性門脈圧亢進症に合併した巨大脾腫による血小板減少症に対する脾臓摘出術後に門脈血栓、脾静脈血栓症を来たした1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。【症例】74歳、女性.【主訴】月経過多【現病歴】1998年4月、食道静脈瘤破裂にてEVLを施行され、特発性門脈圧亢進症の診断を受けていた。その際、脾腫に伴う血小板減少による月経過多を認めた為、脾臓摘出目的にて当科紹介となった。【既往歴】特記すべき事項なし。【家族歴】母:肝癌にて死亡、姉:乳癌【理学所見】眼球結膜:黄染なし。眼瞼結膜:貧血あり。腹部触診にて脾腫を認めた。【血液生化学検査】WBC 1200, RBC 350万, Hb 6.9, PLT 39,000, CRP (-), 肝機能正常【画像所見】腹部エコー及びCTにて13 cm×8 cm×25 cm大の巨大脾腫を認めた。又、脾静脈の著明な拡張とその末梢に小血栓を認めた。【手術所見】上腹部L字切開にて開腹。巨大脾腫の為、先に脾門部の処理を行い、脾臓を摘出した。摘出脾の重量は1kgであった。【術後経過】術後出血なく膵液瘻も認めず順調に経過していた。術後4日目に左側腹部痛及び、背部痛が出現した為、CT検査を行ったところ、脾静脈から門脈本幹に連続する広汎な血栓を認めた。血液検査では肝機能は正常であったが、白血球数、血中アミラーゼ、LDH、CKの上昇を認めた。血小板数は17万であった。以上より門脈、脾静脈血栓症及びそれに伴う膵炎と診断した。緊急腹部血管造影検査にて門脈、脾静脈血栓を確認した後、上腸間膜動脈経由にて血栓溶解療法を開始した。その後臨床症状及び血液検査の改善を認めるも、治療開始2週間目のCT検査では血栓の退縮は認められなかった。現在、アスピリンとワーファリンの内服にて血栓の増大は認めていない。【結語】脾摘後4日目に門脈、脾静脈血栓症を合併し保存的治療にて経過観察しえた1例を経験した。 |