セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
280:体外循環下に全肝血行遮断および体内肝冷却灌流を併施し、下大静脈合併切除に成功した下大静脈浸潤転移性肝癌の一例
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演者 |
本山 健太郎(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)) |
共同演者 |
杉谷 篤(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)), 井上 重隆(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)), 岡部 安博(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)), 大田 守仁(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)), 長谷川 学(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)), 田坂 健彦(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)), 田中 雅夫(九州大学 医学部 臨床・腫瘍外科(第一外科)) |
抄録 |
症例は進行S状結腸癌の70歳男性で、同時性に肝前上区および尾状葉に肝転移巣、また左肺下葉にも肺転移を認めた。平成14年6月、S状結腸癌に対しS状結腸切除術を施行した。その後、肝尾状葉の転移巣は増大し、精査にて下大静脈浸潤を強く疑わせる所見を認めた。 9月6日、肝転移巣に対し手術を施行した。開腹後まず肝前上区の6cm大の転移巣の局所切除をPringle法を用いて行った。次に尾状葉の転移巣の剥離を進めたが、術前診断通り下大静脈に直接浸潤を認め、体外循環下に全肝を灌流冷却した上で、尾状葉と下大静脈の合併切除を行い、肝後面下大静脈を人工血管で置換することとした。右大腿静脈、門脈に脱血用カニューラ、左腋窩静脈に送血用カニューラを挿入し、バイオポンプに接続し体外循環を開始した。つづいて肝上下部下大静脈をクランプし、肝血流を完全に遮断した。さらに門脈に留置針を挿入し肝部下大静脈の一部を切開し脱血路とし、冷ラクテックによる体内肝冷却灌流を開始した。この状態で尾状葉を切除し、下大静脈は肝静脈分岐部より足側で合併切除した。その後肝部下大静脈をリング付きePTFEにて再建し、血流を再開した。血流再開後の肝臓はすぐに良好な色調と硬度に回復した。体外循環時間は1時間50分、肝冷却灌流時間は1時間20分であった。 術後の肝機能は良好に推移し、術後1, 3, 7日目の肝機能はそれぞれT.bil (mg/dl): 0.9, 0.9, 0.5、AST/ALT (U/L): 408/428, 119/259, 26/69、PT activity (%): 56, 98, 105であった。 肝切除から2週間後、左下葉の転移性肺癌に対し胸腔鏡下に左下葉切除を行い、術後は合併症もなく順調に経過している。 下大静脈浸潤転移性肝癌では、近年積極的な下大静脈合併切除を伴う拡大肝切除が試みられ、予後改善に寄与するとの報告があり、本症例では良い適応であったと考えられた。全肝血行遮断には体外循環や肝冷却灌流を併施しない場合もあるが、本症例では血行遮断時間が1時間を超えると予想され、体外循環、肝冷却灌流を併施したことで安全に切除が完遂できたと考えられた。 |
索引用語 |
転移性肝癌, 全肝血行遮断 |