セッション情報 パネルディスカッション8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

NSAIDs腸病変の新たな展開

タイトル 消PD8-2:

NSAID起因性小腸・大腸病変の臨床的検討

演者 蔵原 晃一(松山赤十字病院・胃腸センター(消化器科))
共同演者 川崎 啓祐(松山赤十字病院・胃腸センター(消化器科)), 大城 由美(松山赤十字病院・病理科)
抄録 【目的】NSAID起因性腸病変の臨床的特徴を明らかにすること。【方法】最近8年間に当センターにおいてNSAID起因性小腸病変もしくは大腸病変と診断した症例を対象とし、その臨床的特徴を遡及的に検討した。診断には九州大学松本らの診断基準を用い、1. 小腸病変ないし大腸病変の確認、2. NSAIDの使用歴の確認、3. 他疾患の除外(病理組織学的・細菌学的除外診断をともに必須とする)、4. NSAIDの使用中止のみによる病変の治癒軽快を内視鏡を用いて確認することとし、非手術例はこれらの4項目の全てを満たした全大腸内視鏡ないしバルーン小腸内視鏡施行例を、手術例は1~3を満たした症例を本症と診断した。【成績】計28例(平均年令70.6歳, 男性17例、女性11例)が診断基準を満たしていた。使用NSAIDを検討すると28例中6例では低用量アスピリンが、24例で非アスピリンNSAIDが使用されていた。病変の形態は全例が潰瘍性病変であり、小腸病変は全例が多発性であった。28例中23例で小腸(上部小腸に6例、下部小腸に22例)に、13例で大腸(右半結腸10例、左半結腸3例)に病変を認め、大腸病変を認めた13例中8例で終末回腸を含む小腸にも病変を認めた。内視鏡的止血術を要した症例は2例(ともに小腸)であり、膜様狭窄合併例は1例(小腸)で腸閉塞症状を認めたため内視鏡的バルーン拡張術を施行した。さらに穿孔性小腸潰瘍を3例に認め穿孔性腹膜炎の診断で緊急的に小腸切除術が施行されていた。潰瘍は小潰瘍から輪状潰瘍まで多彩な形態を呈していたが、非手術例では小腸病変、大腸病変ともにNSAIDの使用中止2-9週後に施行した内視鏡検査により全例で治癒傾向を確認した。また、病理組織的には非特異的な炎症細胞浸潤を認めるのみで、28例中8例(25%)でアポトーシス小体の増加を認めた。【結論】NSAID起因性腸病変は無症状から下血、腸閉塞さらには穿孔まで多彩な臨床症状を呈する。
索引用語 NSAID, 腸病変