セッション情報 パネルディスカッション8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

NSAIDs腸病変の新たな展開

タイトル 内PD8-5:

非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)起因性小腸傷害とCYP2C9遺伝子多型

演者 石原 誠(名古屋大・消化器内科)
共同演者 大宮 直木(名古屋大・消化器内科), 後藤 秀実(名古屋大・消化器内科)
抄録 【目的】カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡(DBE)によりNSAIDsは上部消化管のみならず小腸にも傷害を来すことが近年報告されている。また、NSAIDsの多くはCYP2C9にて代謝され、CYP2C9遺伝子多型のNSAIDs起因性上部消化管障害への関与が海外で報告されているが、NSAIDs起因性小腸傷害との関連は不明である。今回、NSAIDs起因性小腸傷害の臨床的病理学的特徴およびCYP2C9多型との関係について検討した。【方法】対象は2003年6月~2011年3月に当院でDBEを施行したNSAIDs(低用量アスピリン48例、従来型NSAIDs48例、併用群11例)内服中の患者107例(年齢67.4±10.9歳、男/女=58/50)。CYP2C9遺伝子多型の解析はTaqManPCR法を用いた。【結果】検査契機は出血 91例、腸閉塞9 例、その他7例。DBE所見はNSAIDs内服群107例中小腸異常なし30例、潰瘍性病変38例、血管性病変21例、腫瘍性病変16例。NSAIDs起因性小腸傷害と診断したのは28例(低用量アスピリン5例、従来型NSAIDs 16例、併用群7例)で、その中で膜様狭窄は7例あった。主な薬剤別小腸病変発生率において、ロキソプロフェン(34%)は、ジクロフェナク(62%)、メロキシカム(83%)と比較して低頻度であった。DBE下生検は19例で施行し、2例(11%)にapoptosis像を認めた。治療は膜様狭窄7例中6例にバルーン拡張術を行い1例は外科切除施行。膜様狭窄群7例中5例はメロキシカム内服例で、非狭窄群と比較して有意に高率であった。またNSAIDs起因性小腸傷害18例(膜様狭窄5例中)のCYP2C9の遺伝子多型を解析すると、NSAIDs起因性小腸傷害全体で有意差は認めなかったが、膜様狭窄の2例でCYP2C9*3アレル(*1/*3が1例、*3/*3が1例)を保有し、コントロール856例と比較して有意に高率であった(P=0.042)。特に*3/*3保有者の病変は高度で、空腸・回腸全域に6ヶ所のピンホール狭窄を認めた。【結論】DBEはNSAIDs起因性小腸傷害の診断および治療に有用であった。NSAIDs起因性膜様狭窄ではメロキシカムの使用とCYP2C9遺伝子多型が発症リスクであることが示唆された。
索引用語 NSAIDs, 小腸