セッション情報 パネルディスカッション8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

NSAIDs腸病変の新たな展開

タイトル 内PD8-6:

健常人ボランティアを用いたセレコキシブ及びロキソプロフェン起因性小腸粘膜傷害の比較

演者 水上 一弘(大分大・消化器内科)
共同演者 村上 和成(大分大・消化器内科), 藤岡 利生(大分大・消化器内科)
抄録 【背景と目的】非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、炎症や鎮痛、発熱に対して幅広く汎用されているが、一方で上部消化管粘膜傷害だけでなく、小腸粘膜傷害の合併が問題となっている。現在消化管に発現するCOX-1をほとんど阻害しないセレコキシブが登場し、上部消化管については、従来のNSAIDsよりも明らかに粘膜傷害が少ないことが証明された。今回我々は本邦で最も使用されているロキソプロフェンとセレコキシブを健常人に投与し、カプセル内視鏡検査にて小腸粘膜傷害の出現を調査したため報告する。【方法】健常人男性10名を無作為にセレコキシブ群(C群:セレコキシブ 200mg+ファモチジン 20mg), ロキソプロフェン群(L群:ロキソプロフェン 180mg+ファモチジン 20mg)に割り付け、14日間投与を行った。投与後14日間washout期間をおいた後、もう一方の群の内服を行うクロスオーバー試験を行った。それぞれの群の内服前と14日間内服終了後にカプセル内視鏡検査を行い、小腸粘膜の観察を行った。カプセル内視鏡はオリンパス製Endo Capsule®を用いた。所見は粘膜傷害(発赤, びらん, 潰瘍)の有無で評価し、粘膜傷害出現症例数や粘膜傷害病変数を算出し、解析はpaired t-testを用いて、両群の比較検討を行った。なおこの試験は、当院臨床研究審査委員会にて審査され、承認を受けている。【成績】小腸粘膜傷害はL群 7例(70%)、C群 1例(10%)に認められ、有意にC群に少なかった(p=0.031)。潰瘍は両群で1例も認めなかった。びらんは、L群では4例に認め、C群では1例も認めなかった。1人あたりの平均小腸粘膜傷害病変数はL群 2.9±4.9個, C群 -0.5±1.4個と有意差は認められなかったが、明らかにC群で減少している傾向があった。【結論】セレコキシブはロキソプロフェンと比較して、小腸粘膜傷害を予防していた。NSAIDs起因性小腸粘膜傷害の予防が検討されているが、従来のNSAIDsからセレコキシブへの薬剤変更もひとつの選択肢となりうると考える。
索引用語 セレコキシブ, 小腸粘膜傷害