セッション情報 パネルディスカッション8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

NSAIDs腸病変の新たな展開

タイトル 内PD8-7:

COX-2選択的阻害薬による小腸粘膜病変:セレコキシブとメロキシカムの前向き無作為化二重盲検試験

演者 前畠 裕司(九州大大学院・病態機能内科学)
共同演者 江崎 幹宏(九州大大学院・病態機能内科学), 松本 主之(九州大大学院・病態機能内科学)
抄録 【目的】COX-2選択的阻害薬であるセレコキシブとメロキシカムによる小腸粘膜傷害をカプセル内視鏡(CE)を用いて比較検討する。【方法】試験薬投与前に小腸粘膜傷害がないことをCEで確認した健常人30例(男性17例、女性13例;年齢24-50歳、平均33歳)を対象とした。対象者をセレコキシブ群またはメロキシカム群へ無作為二重盲検で割り付けし、セレコキシブ群にはセレコキシブ400mg/日を、メロキシカム群にはメロキシカム10mg/日をプロトンポンプ阻害薬とともに2週間投与した。投薬終了後にCEを実施し、小腸粘膜傷害(出血、潰瘍、びらん)の発生頻度、発生個数ならびに病変発生部位を2群間で比較した。さらに、得られた結果からCOX-2選択的阻害薬による小腸粘膜傷害発生の危険因子を多変量解析を用いて検討した。【結果】14例がセレコキシブ群に、16例がメロキシカム群に割り付けられたが、メロキシカム群のうち1例はカプセルが胃内に滞留したため検討対象から除外した。小腸粘膜傷害はセレコキシブ群14例中6例(潰瘍3例、びらん6例)の43%、メロキシカム群15例中4例(潰瘍4例、びらん3例)の27%に認められ、その発生頻度に差はなかった(p=0.45)。粘膜傷害陽性者における潰瘍やびらんの病変数の比較では、潰瘍数がセレコキシブ群(0-1個[中央値1個])に比べメロキシカム群(1-3個[中央値3個])で有意に多かった(p=0.02)。一方、びらんはセレコキシブ群(1-13個[中央値6個])とメロキシカム群(0-16個[中央値13個])の間で差はなかった(p=0.52)。いずれの群でも小腸粘膜病変は回腸に好発し、病変分布に差を認めなかった。多変量解析では、年齢がCOX-2選択的阻害薬による粘膜傷害の有意な危険因子として抽出され(オッズ比 0.76 [95% CI: 0.51-0.98])、若年者に好発する傾向がみられた。【結論】COX-2選択的阻害薬でも小腸粘膜傷害が惹起されるが、セレコキシブはメロキシカムよりも粘膜傷害性が軽微と考えられた。また、若年者が小腸粘膜傷害の危険因子である可能性が示唆された。
索引用語 COX-2選択的阻害薬, セレコキシブ