セッション情報 パネルディスカッション8(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

NSAIDs腸病変の新たな展開

タイトル 消PD8-10:

心臓専門病院での低用量アスピリン服用患者の下部消化管病変の臨床像および内視鏡所見の検討

演者 藤村 宜憲(心臓病センター榊原病院・消化器内科)
共同演者 榊原 敬(心臓病センター榊原病院・消化器外科), 塩谷 昭子(川崎医大・消化管内科)
抄録 【目的】近年,低用量アスピリン(LDA)に起因する消化管病変の増大が指摘されている。しかし,LDA起因性下部消化管病変の検討は少ない。今回,心臓専門病院のLDA起因性下部消化管病変の臨床像および内視鏡所見を検討した。【方法】心臓病センター榊原病院の過去4年4ヶ月間の大腸内視鏡検査施行例2,635例の内,LDA起因と考えられる下部消化管病変を有する患者は92例(3.5%)で,LDA服用者1684例の5.4%に相当し,その臨床像,内視鏡像を検討した。これら92例は炎症性腸疾患を除外し,病歴,内視鏡,細菌培養,臨床経過からLDA起因と診断した。【成績】男女比は3:1と男性に多く,年齢は33歳から93歳,平均72.9歳である。投与薬剤はLDA単独25%, LDA+ワルファリン30%, LDA+クロピドグレル16%, LDA+ワルファリン+クロピドグレル8%, LDA+チクロピジン7%, その他14%であった。投与期間は6ヶ月以上62%, 1-6ヶ月25%, 1ヶ月未満13%であった。臨床症状として下血, 便潜血陽性,貧血,無症状など認めた。内視鏡所見では発赤47%, アフタ12%, 潰瘍29%, 狭窄0.9%, 憩室出血11.1%を認めた。病変部位は終末回腸から直腸までいずれの部位でも認められ,直腸33%, S状結腸24%,上行結腸14%に多く認めた。症状と内視鏡所見の検討では,下血/貧血/便潜血陽性患者群の内視鏡所見は発赤,潰瘍,憩室出血が多く,無症状群では発赤,アフタを多く認めた。また,下血患者36例の薬物治療ではLDA中止は16例(45%)で,多量下血例が多く,その内,6例はLDAからヘパリンに切り替えられ,8例にミソプロストールが,2例にレバミピドが追加投与されていた。また,LDAの投与継続は20例(55%)で,3例にミソプロストールが追加投与されていた。臨床症状は全例改善されていた。【結論】今後の高齢者医療において,臨床医はNSAIDsに限らずLDA服用患者でも様々な下部消化管病変が発生しうるという認識が必要である。
索引用語 低用量アスピリン, 下部消化管病変