抄録 |
【目的】NSAIDs起因性小腸粘膜障害の臨床像の特徴について, 当科でダブルバルーン内視鏡 (以下DBE)を施行した症例を対象に検討する. 【対象と方法】当科にて2011年1月までにDBEを施行した713例 (のべ1163件)のうちNSIADs起因性小腸粘膜障害と診断した16例 (男性7例, 女性9例, 平均年齢73.2歳)を対象に, 検査動機, 内服薬の種類, 内服理由, 内視鏡所見, 治療法について検討した. 対照として同時期にDBEを施行しNSAIDs起因性小腸粘膜障害を認めなかったNSAIDs内服例109例 (男性70例, 女性39例, 平均年齢61.2歳)を用いた. 【結果】検査動機はOGIB精査13例 (overt 11例, occult 2例)、腹部症状精査3例 (腹痛2例, 下痢1例)で, NSAIDs内服例の12% (16/125)であった. NSAIDsの種類は, loxoprofen sodium 9例, diclofenac sodium 6例, aspirin 1例で, 各薬剤内服者の39% (9/23), 21% (6/28), 2% (1/46)に認めた. 内服理由は腰痛7例, 膝関節痛3例, 慢性関節リウマチ2例, その他4例, 局在は単発2例 (下部小腸2例), 多発14例 (全小腸2例, 下部小腸12例)であった. 内視鏡所見は, 輪状潰瘍が4例, 小潰瘍/びらん11例, 潰瘍瘢痕1例であった. 治療法は, 14例でNSAIDsを中止し軽快した.膜様狭窄2例に対してバルーン拡張術を施行し保存的に加療できた. NSAIDs中止困難であった2例は, 胃粘膜防御因子製剤単剤では貧血の改善を認めなかったが, 複数併用することで貧血は速やかに改善し経過良好である. 【まとめ】NSAIDs起因性小腸粘膜障害は, NSAIDs内服者の12%に認め, 多彩な内視鏡像であった. また, NSAIDsを中止できない場合には胃粘膜防御因子製剤を組み合わせることで小腸粘膜障害を予防できる可能性があると考えられた.(共同研究者:田中信治、今川宏樹、青山大輝) |