セッション情報 パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

膵管癌の危険因子と早期診断

タイトル 消PD9-3:

膵癌のリスクファクターとしての糖尿病-糖尿病患者における効率的な膵癌スクリーニングを目指して-

演者 土岐 真朗(杏林大・3内科)
共同演者 杉山 政則(杏林大・外科), 高橋 信一(杏林大・3内科)
抄録 【目的】膵癌は,5年生存率5%以下と極めて予後不良であり,原因の一つとして,診断時すでに外科的切除不能であることが挙げられる.膵癌患者の予後改善には効率的なスクリーニング法の確立が急務である.糖尿病はその危険因子として知られるが,その対象数は膨大であり,糖尿病患者の中からさらなる膵癌リスク患者の絞り込みが求められている.今回我々は膵癌の効率的なスクリーニング法の確立を目指し,糖尿病合併膵癌患者の臨床的背景をretrospectiveに検討した.【方法】2006年1月から2011年3月までに当院における膵癌患者(IPMCは除く)287例のうち膵癌発見時すでに糖尿病を合併していた68例を対象とした.この68例について,A群:糖尿病の新規発症あるいは増悪を契機に画像検索がなされ膵癌が発見された症例,B群:A群以外で膵癌が発見された症例に分け,膵癌診断時における症状,HbA1c,膵酵素,腫瘍マーカー(CEA,CA19-9,DUPAN-2,Span-1),腫瘍径,予後について比較検討した.【結果】A群34例,B群34例であった.膵癌診断時の症状ではA群では有症状32.4%に対して,B群では皮膚黄染,発熱,上腹部痛など全例有症状であった.膵酵素,腫瘍マーカー,腫瘍径(32±13mm vs 33±12mm)に有意差は認められなかったが,HbA1cはA群で有意に高値であった(10.0±1.9% vs 8.6±2.1%,p=0.006).また,切除率はA群で有意に高かった(41.1% vs 18.0%, p=0.02).予後は統計学的有意差を認めなかったが,A群で長い傾向がみられた(490±72日vs342±47日,p=0.09).尚,画像診断は全例造影CTでなされ,組織学的検査にて確定診断を得た.【結論】糖尿病を合併した膵癌では,無症状例が半数以上であり,膵癌発見において糖尿病発症・増悪が契機となっている.HbA1c 10%以上の増悪時には腹部造影CT等の精査をすることで,早期の膵癌の拾い上げにより切除可能例の増加及び予後の延長が期待される.
索引用語 膵管癌, 糖尿病