セッション情報 シンポジウム15(消化器外科学会・消化器病学会合同)

下部直腸癌側方リンパ節転移に対する診断と治療方針

タイトル 外S15-2:

当センターにおける下部直腸癌側方郭清の治療成績‐術前画像診断に基づく適応の絞込みと徹底郭清‐

演者 矢野 秀朗(国立国際医療研究センター・外科)
共同演者 齋藤 幸夫(国立国際医療研究センター・外科)
抄録 【目的と方法】当センターでは術前CT所見をもとに側方郭清の適応のさらなる絞込みを行うと共に、適応例においては徹底した郭清を行うという治療方針を1995年より一貫して行ってきた。側方郭清の適応は、下部直腸Rbにかかる直腸癌で深達度によらず術前CT(5mmスライス)にて側方リンパ節腫大または複数個の間膜内リンパ節腫大を認める場合とした。術前放射線療法は行っていない。【結果】1995年4月から2005年12月までに、腹膜翻転部以下に腫瘍下縁を有する直腸癌(以下、下部直腸癌)と診断された連続164症例のうち133例において手術時に遠隔転移を認めずcurative intentの手術がなされた(LAR 52例、ハルトマン12例、APE 60例、TPE 9例)。側方郭清は上記適応に基づき全例の39%に施行、うち44%において側方リンパ節転移が病理学的に認められた。側方郭清を施行しなかった症例で骨盤壁再発は2例のみであった。側方郭清施行の累積局所再発率は12%に対し、非施行例で9%。病理学的側方転移陽性例の5年無再発生存率は62%であった。側方郭清施行例における神経温存率は低かったが、術後排尿機能は比較的保たれていた。【考察】少なくとも現状では側方郭清の適応の絞込みを画像診断で行うのが現実的と考えられる。ただし、画像診断の更なる発展に伴い当センターにおいても側方郭清の適応の変更を余儀なくされており、近年ではthin-slice CTやMRI等の画像診断を用いている。本セッションではわれわれの近年の経験を報告すると共に今後の課題・展望を述べたい。また、2009年からは側方郭清も積極的に腹腔鏡下に行っている。当然のことながら、従来の開腹下側方郭清と比べてクォリティを落とすことなく行うことが重要であり、そのポイントをビデオも用いて供覧したい。
索引用語 側方郭清, 下部直腸癌