セッション情報 パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

膵管癌の危険因子と早期診断

タイトル 消PD9-5:

IPMN症例における膵管癌の危険因子~北海道膵臓研究会多施設調査1181例の検討

演者 丹野 誠志(琴似ロイヤル病院・消化器病センター)
共同演者 真口 宏介(手稲渓仁会病院・消化器病センター), 久居 弘幸(伊達赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】北海道膵臓研究会の多施設調査をもとに、分枝型IPMN症例における膵管癌合併例の臨床的特徴を検討し、危険因子および効率的な早期診断法について明らかにする。【対象と方法】北海道内17施設から得られた分枝型IPMN症例1181例を対象に、1) 膵管癌合併頻度、2) 膵管癌診断契機、3) 膵管癌合併例と非合併例の臨床的特徴、についてretrospectiveに検討した。膵管癌の定義は組織学的に管状腺癌であり、IPMNと離れているものとした。【結果】1) 1181例中50例(4.2%)が膵管癌合併と診断された。同時性23例(46%)、異時性27例(54%)であった。2) 膵管癌の診断契機は、黄疸・腹痛などの症状が同時性14例(60.9%)、異時性7例(25.9%)、無症状でUS、CT、腫瘍マーカー上昇などの定期検査によるものが異時性20例(74.1%)であった。3) 膵管癌合併例と非合併例において、年齢はそれぞれ71.2±8.9歳、72.0±10.3歳(有意差なし:NS)、男女比は26:24、581:550(NS)、IPMN部位(頭部:体尾部)は20:30、446:685(NS)、IPMN嚢胞径は23.4±18.7mm、22.5±11.0mm(NS)、主膵管径は3.6±2.2mm、3.2±1.5mm(NS)、糖尿病増悪または2年以内発症糖尿病を6例(8.8%)、18例(1.6%)に認めた(p<0.001)。他臓器癌合併を10例(20.0%)、303例(26.9%)に認め(NS)、さらに他臓器癌1臓器のみ、2臓器以上合併に分けて検討したが有意差は見られなかった。また、二親等内膵管癌家族歴を3例(6.0%)、7例(0.6%)に認めた(p<0.001)。【結論】北海道多施設調査の結果、分枝型IPMN症例1181例における膵管癌合併頻度は4.2%と高率であり、膵管癌の危険因子として、糖尿病増悪・2年以内発症糖尿病、二親等内膵管癌家族歴が重要であることが示唆された。分枝型IPMN症例を高危険群として、US、CT、腫瘍マーカーなどでスクリーニングを行う診断体系を組むことは膵管癌早期診断に有用と考えられた。
索引用語 IPMN, 多施設