抄録 |
【目的】膵癌高危険群である慢性膵炎(CP)および膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の経過観察中に発生した膵癌例について検討する。【対象と方法】2010年12月までに当科入院歴のあるCP 653例と当科で診療したIPMN 614例を対象とした。検討項目は,1) 膵癌発生頻度と内訳、2) 発生部位,3)診断時期と検査所見、4)治療内容と予後、5)診断前検査所見,とした。【結果】1)膵癌発生は、CP 8例(1.2%)(男女比6:2、年齢51~80歳 中央値 66)、IPMN 11例(1.8%)(5:6、56~76 69、分枝型11)であった。 2) CPではPh 3、Pbt 5、IPMNではPh 6、Pbt 5であった。IPMNでは明らかに離れて発生したのは8例であり、うち7例がIPMNの尾側に発生しており、3例は隣接発生であった。3)膵癌発見までの期間は、CPでは平均32.9カ月(8.4~71.8)、IPMNでは34.0カ月(4.7~92.6)であった。膵癌発見契機となった画像検査法は、CPでUS 2,CT 6であり、すべて腫瘍を描出していた。IPMNでは発見時に直接腫瘍描出例はUS 2、CT 4であり、間接所見指摘が5例であった。4)CPでは切除4、非切除4であり、平均腫瘍径 29.4mm、TS1は2(25%)、fStageはI 2, III 1, IVa 1, IVb 4であった。IPMNは切除7、非切除4、平均腫瘍径29.3mm、TS1は3(37.5%)、fStage I 1、III 4、IVa 4、IVb 2であった。PK診断からの平均生存期間はCPで16.3カ月(原病死4、無再発生存3、再発生存1)、IPMNは20.0カ月(原病死 4、無再発生存6、再発生存1)であった。5)膵癌診断前の画像検査時期は,CPで半年以内 3例,1年以内 3,1年以上 1、詳細不明 1であり、IPMNでは半年以内 6、1年以上 5であった。これらの画像検査の見直しにて膵癌の存在を疑い得たのは半年以内のCP 2、IPMN 4であった。【結論】慢性膵炎とIPMNの経過観察中の膵癌の発生率は1.2%, 1.8%であった。両者には切除率、予後などに差は認めなかった。また、画像所見の見直しからCP、IPMNとも、少なくとも半年間隔の経過観察が必要である。 |