セッション情報 |
パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)
膵管癌の危険因子と早期診断
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タイトル |
消PD9-8:膵管癌の危険因子としての分枝型IPMNと慢性膵炎の対比
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演者 |
大野 栄三郎(名古屋大附属病院・光学医療診療部) |
共同演者 |
廣岡 芳樹(名古屋大附属病院・光学医療診療部), 後藤 秀実(名古屋大附属病院・光学医療診療部DELIMITER名古屋大大学院・消化器内科学) |
抄録 |
【目的】膵癌の危険因子と言われる、分枝型(BD-)IPMN及び慢性膵炎(CP:膵石症及び腫瘤形成性膵炎)患者の癌化危険率を解明すること。【対象】2010年12月までに当院にて診断したBD-IPMN381例、CP414例中、12か月以上の経過観察が可能であったBD-IPMN143例及びCP95例。男性:女性=157:81例。平均年齢62.7歳。本解析ではCPは膵石を認める慢性膵炎確診例及び組織学的に膵腫瘍を除外した腫瘤形成性膵炎例を対象とした。BD-IPMNの膵管癌合併の定義は切除例については病理組織診断を基に行い、切除不能例は経過観察中のBD-IPMNと離れた部位に出現した充実性腫瘍でFNAにて病理学的診断が得られた症例とした。【検討項目】BD-IPMN及びCP経過観察例における膵管癌発生頻度をKaplan-Meier法を用い算出した。BD-IPMNについてはIPMN自体の悪性化頻度も算出した。また観察期間を通してのBD-IPMN及びCPに併発する膵管癌の発生頻度を年齢、性を標準化して算出(SIR:Standardized Incidence Ratio)した。【結果】BD-IPMN経過観察例143例(平均観察期間49.2か月)中、5例(3.5%:男性4例、発生までの期間の中央値は39か月)に膵管癌の合併を認めた。2例は局所因子及び癌性腹膜炎にて切除不能であった。5年発生率は2.7% 、SIRは18.3(95%CI2.26-34.3)であった。一方でBD-IPMN自体の悪性化は9例(6.3%)に認めた。CP経過観察例95例からは2例(2.1%:男性2例、観察期間24か月、120か月)に膵管癌の合併を認めた。うち1例は癌性腹膜炎にて切除不能であった。5年発生率は3.8%、SIRは17.7(95%CI-2.25-36.5)であった。今回の検討からはBD-IPMN及びCPには、通常の20倍程度の膵管癌発生リスクがあり、その危険性はBD-IPMNにてより高い傾向を認めた。【結語】BD-IPMN及びCPは膵管癌の危険因子であり、膵管癌早期診断のための具体的観察期間の設定が急務である。 |
索引用語 |
IPMN, 慢性膵炎 |