セッション情報 パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

膵管癌の危険因子と早期診断

タイトル 消PD9-9:

分枝型IPMNに対するEUSを用いた長期経過観察例の成績と治療戦略

演者 肱岡 範(愛知県がんセンター中央病院・消化器内科)
共同演者 原 和生(愛知県がんセンター中央病院・消化器内科), 清水 泰博(愛知県がんセンター中央病院・消化器外科)
抄録 【背景と目的】IPMN国際ガイドラインにおけるIPMN分枝型の経過観察は、CTとMRIを主な検査法とし、2年間変化がなければ検査間隔の延長も可としている。一方、IPMNは通常型膵癌(PDAC)のハイリスクとの認識が高まり、IPMN悪性化とともに、PDACの早期発見が膵癌全体の治療成績向上に繋がると考える。当院では膵内を隈なく、かつ微細な病変の変化を鋭敏に捉えられるEUSを長期経過観察の主な検査法と位置づけ、病変のサイズに拘らず年1回実施している。当院でのEUSを基本としたIPMNの経過観察の成績を検討した。【対象・手法】1988年から2008年の間に当院にてIPMNと診断された299例中、2年以上(平均観察期間59ヶ月)経過観察できた分枝型IPMN 103例(男性58例、女性45例)。平均年齢:62歳(38-84歳)。CT、EUS、ERCPで確定診断後に手術適応のないものは原則年1回のEUSを施行し追跡した。主膵管径2mm以上、嚢胞10mm以上、壁在結節1mm以上の何れかの増大を認めるものを進行性病変とし、CTやERCPで精査を行った。急性膵炎の合併、主膵管径10mm以上、壁在結節10mm以上、または腫瘍本体の急速な増大を認めた症例は外科的切除が行われた。【結果】74例(72%)は不変、29例(28%)は進行性病変であった。6例(5.8%)に癌の出現を認め、その内訳はIPMC4例(非浸潤2,微小浸潤1、浸潤1)、PDAC 2例であった。5例が切除可能(JPSstage0/I/II/III: 2/1/1/1)で経過観察が不十分であった浸潤型IPMCの1例が局所進行により切除不能であった。膵癌発生群は非発生群に比し、主膵管径と結節径、初診時他臓器癌の合併が有意に高値であった。膵癌の累積発生率は5年で2.3%、10年で23.8%と高率であった。【考察】EUSによるIPMNの経過観察法はCTやMRIに比べ侵襲性は高いものの、外来で実施でき、膵全体の詳細な観察が可能なため悪性病変でも比較的早期に発見できた。IPMNは長期に継続的な経過観察が必要な病変であり、年一回のEUSは被爆の問題もなく合理的な経過観察方法と考えられた。
索引用語 EUS, IPMN