セッション情報 パネルディスカッション9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

膵管癌の危険因子と早期診断

タイトル 消PD9-13:

早期膵管癌発見のための診断体系

演者 柳川 伸幸(旭川厚生病院・消化器科)
共同演者 藤永 明裕(旭川厚生病院・消化器科), 後藤 拓磨(旭川厚生病院・消化器科)
抄録 【目的】早期膵管癌発見のための効率的な診断体系を検討する.【方法】 2005年4月から2010年12月までの間に,当科で経験した膵管癌患者,総計260例(男性140例,女性120例,平均年齢72.7歳)と,そのうち腫瘍径が20mm以下であったTS1症例20例(男性9例,女性11例,平均年齢72.9歳,非手術例も含む)に関し,患者背景,画像診断を検討し,早期膵管癌発見を導く因子の検討を行った.年齢が70歳以上で平成21年度に当院の人間ドックでUSが施行された504例(男性358例,女性146例,平均年齢73.4歳)を対照として用いた.【成績】 TS1膵管癌症例の有症状率は,55%(11例)で,70%(14例)の症例が術後または持病があり定期的に外来診察を受けていた.発見契機となったmodalityはCTが55%(11/20)と最も高かった.US,CT,MRI,EUSでの腫瘍描出率,PETの異常集積率はそれぞれ81.8%(9/11),95%(19/20),76.9%(10/13),100%(20/20),71.4%(10/14)であった.このうち,CTで15.0%(3/20)に早期濃染を認めた.TS1以外の膵管癌症例におけるPET異常集積率は95.2%(119/125)であったことから,TS1膵管癌症例で有意に低かった(p<0.01).全膵管癌症例に関して,各種画像診断で認められた肝嚢胞,腎嚢胞,膵嚢胞,IPMN,胆石の保有率はそれぞれ20.8%(54例),44.2%(115例),6.5%(17例),3.8%(10例),15.0%(39例)であった.一方,人間ドック受診者の肝嚢胞,腎嚢胞,膵嚢胞(IPMNも含む),胆石保有率は,それぞれ28.0%(141例), 37.3%(188例),3.8%(19例),5.8%(29例)であったことから,腎嚢胞は膵管癌症例に多い傾向にあったが,肝嚢胞を含めて2群間に有意差を認めなかったものの,膵管癌症例でIPMNを含めた膵嚢胞病変と胆石の保有率は有意に高かった(p<0.01).【結論】早期膵管癌発見のためには,無症状であっても,画像診断で,膵嚢胞,IPMN,胆石を発見した際には,早期濃染に着目したCTさらにはEUS等の定期的な画像診断を用いた慎重な経過観察が重要と思われた.
索引用語 早期膵管癌, 診断体系