セッション情報 シンポジウム15(消化器外科学会・消化器病学会合同)

下部直腸癌側方リンパ節転移に対する診断と治療方針

タイトル 外S15-3:

下部直腸癌側方リンパ節転移の予測と治療効果

演者 金光 幸秀(愛知県がんセンター中央病院・消化器外科)
共同演者 小森 康司(愛知県がんセンター中央病院・消化器外科), 木村 賢哉(愛知県がんセンター中央病院・消化器外科)
抄録 [目的]当院では、従来よりRbではcMP以深から側方リンパ節郭清の適応としてきた。今回その成績から、術前の側方リンパ節転移予測診断の可能性と転移例に対する手術および補助療法の治療効果を検証する。[対象と方法]1975年から2009年までに系統的側方郭清を施行した根治度Aの下部直腸癌は517例であり、側方転移陽性は78例(15.1%)に認められた。この78例を対象として、術前に評価できる因子のみを用いて、側方リンパ節転移を予測する多変量モデル(ノモグラム)の作成を試みた。また、術後化学療法施行群(n=51)と非施行群(n=27)、術後放射線照射群(n=27)と非照射群(n=51)に分けて遠隔成績について比較検討した。[結果]ロジスティック回帰分析にて、女性(P=0.035)、腫瘍下縁からAVまでの短い距離(p<0.0001)、術前CA19-9高値(p=0.043)が側方リンパ節転移の危険因子として抽出された。これら3因子を用いた側方転移予測ノモグラムを作成すると、ROC曲線下面積(AUC)=0.622(0.5=worthless test、1.0=perfect test)であり、その転移予測能は不良であった。側方転移陽性78例の5年生存率(5生率)は45.6%であった。深達度別の側方リンパ節転移率はpTis-SM=0%、pMP=7.5%、pA=19.7%、pAi=27.3%で、転移陽性例の5生率はpMP=51.3%、pA=48.5%、pAi=24.2%であった。補助療法の有無別でみた場合に術後化学療法施行群が非施行群より有意に5生率が良好であった(58.0% vs 25.9%, p=0.020)。一方、術後照射群と非照射群との間には5生率で有意な差を認めなかった(40.1% vs 48.9%, p=0.303)。多変量解析では術後補助化学療法が独立した予後因子であった。[結語]深達度MP以深の下部直腸癌では、側方転移陽性であっても長期生存する症例が見込めることから、側方郭清には一定の治療効果があると考えられる反面、その限界も明らかになった。側方転移陽性例を高精度に抽出し、有効性が認められた化学療法を含めて、各種補助療法の最適な投与時期を明らかにすることが今後の課題であると思われた。
索引用語 直腸癌, 側方リンパ節