抄録 |
【目的】近年、抗糖尿病薬であるMetforminが前立腺癌、乳癌に対して抗癌作用を持つことが報告されている。今回、我々は、Metforminが胃癌に対して、抗癌作用を持つことをin vitro, in vivoの系で証明した。更に、Metforminの抗癌作用に関連するmicroRNAの同定を網羅的に解析した。【方法】1.in vitroの系:胃癌細胞株として,MKN1, MKN45, MKN74を使用し、Metformin投与による細胞増殖をcell proliferation assayにより検討し、種々の細胞周期関連分子の発現動態はWestern blot法により検討した。また、Metformin投与により、誘導されうるmiRNAsを1000分子が搭載されたアレイを用いて網羅的に検討した。2.in vivoの系 :MKN74細胞をヌードマウスに皮下移植し、Metforminが、in vivoにおいても増殖を抑制するかを検討し、胃癌細胞株におけるMetformin投与による細胞周期関連分子、miRNAsについても、in vitroの系と同様に検討した。【結果】1.in vitroの系:Metfromin投与は非投与群と比較して、3種類全ての胃癌細胞株で増殖は抑制されていた。Metformin投与は非投与と比較し、CyclinD1, Cdk4, Cdk6の発現が抑制され、Rbのリン酸化は低下していた。また、フローサイトメトリーにおける検討でも、Metformin投与は、胃癌細胞株をG1停止に導いていた。Metformin投与により、43種類の miRNAsの発現動態が有意に変化し、特に癌抑制miRNAsであるhsa-let-7familiyの発現は極めて昂進していた。2.in vivoの系:Metformin投与は、胃癌細胞の増殖を顕著に抑制し、さらに、細胞周期関連分子、miRNAsの動態変化もin vitroの系に類似していた。【結論】Metforminが胃癌対し抗がん作用を持つことをin vitro, in vivoの系において証明した。さらに、そのMetforminの抗癌作用の一つに癌抑制miRNAsであるhas-let-7familiyなどを誘導し、細胞周期のG1期で停止させることにより癌細胞の増殖を抑制することが示唆された。 |