セッション情報 パネルディスカッション10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における分子標的治療

タイトル 消PD10-2:

スプライシング阻害剤pladienolideの胃癌に対する抗腫瘍効果の検討-splicing factor 3bを標的として-

演者 佐藤 桃子(徳島大・消化器内科)
共同演者 青柳 えり子(徳島大・消化器内科), 高山 哲治(徳島大・消化器内科)
抄録 【目的】PladienolideはStreptomyces platensisから単離された12員環マクロライド化合物であり、splicing factor SF3bを標的としてスプライシングを阻害することにより抗腫瘍効果を発揮する。Pladienolideは、乳癌細胞株に対する抗腫瘍効果が示されているが、胃癌に対する有効性は検討されていない。そこで本研究では、pladienolideの胃癌培養細胞及び腹水中の胃癌初代培養細胞に対するin vitro, in vivoの抗腫瘍効果を検討した。【方法】本研究は当院の倫理委員会の承認を得て行った。癌性腹膜炎患者10例を対象に腹水穿刺を行い胃癌細胞の初代培養を行った。Pladienolideは、最も抗腫瘍活性の高いpladienolideB誘導体(E7107, Nat Chem Biol 3:570-5, 2007)を用いた。胃癌細胞に各濃度のE7107を添加し、3日間培養した後MTT assayを行いIC50を算出した。胃癌細胞をSCIDマウスの側腹部に接種し(xenograft model)、直径5mmになった時点でE7107 (10mg/mg/kg)またはVehicleをday0, 2, 4, 6に腹腔内投与し、4週後に腫瘍体積を測定した。E7107のsplicing抑制効果は、DNAJB1、BRD2などのRT-PCRを行い評価した。【成績】E7107は、MKN45などの胃癌培養細胞に用量依存的に抗腫瘍効果を示した(IC50=2-5nM)。10例の腹水初代培養細胞のIC50は平均3.3±2.1nMであり、このうち8例では乳癌細胞株に比べて高い抗腫瘍活性(2-6nM)を示した。3例で行ったXenograftの検討では、Vehicle群においては4週後に腫瘍は平均10.3倍に増大したが、E7107群では0.14倍に縮小し(p<0.01)、day10までに83% (15/18)のマウスで腫瘍が完全に消失した。これらのマウスでは、いずれも組織学的にも腫瘍の消失が確認された。E7107投与5日目のマウス腫瘍細胞ではDNAJB1, BRD2のmRNA長は明らかに大きく、splicing阻害が確認された。【結論】Pladienolide は、胃癌腹水細胞に対してsplicingを阻害することにより高い抗腫瘍活性を示すことが示唆された。さらに、本薬剤の効果予測因子についても併せて報告する予定である。
索引用語 pladienolide, 胃癌