セッション情報 パネルディスカッション10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における分子標的治療

タイトル 消PD10-4:

大腸癌の増殖・転移における骨髄由来間葉系幹細胞の重要性

演者 北台 靖彦(広島大大学院・分子病態制御内科学)
共同演者 品川 慶(広島大大学院・分子病態制御内科学), 茶山 一彰(広島大大学院・分子病態制御内科学)
抄録 【目的】癌組織は癌胞巣と間質組織から構成されている。我々はこれまで腫瘍間質においてplatelet-derived growth factor receptor (PDGFR)が高発現し、治療の標的分子となることを報告してきた。腫瘍間質に存在する筋線維芽細胞はcarcinoma-associated fibroblast (CAF)とも称され、腫瘍の増殖、進展を促進すると考えらている。CAFの由来に関しては諸説あるが、そのひとつとして骨髄由来細胞の関与が示唆されている。本研究では大腸癌のマウス同所性移植モデルを用いて、骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell; MSC)による腫瘍増殖・転移促進効果を示すとともに、これらの効果が分子標的治療薬により抑制しうるかどうかを検討した。【方法】ヒト大腸癌細胞株KM12SM細胞を用いてヌードマウスに盲腸腫瘍あるいは肝転移巣を形成した後に、蛍光標識したヒト骨髄由来MSCを循環血液内に投与し、腫瘍部へのMSCの集積を検討した。またKM12SM細胞のみ(単独移植群)、ないしはKM12SM細胞とMSCを混合(混合移植群)したのちに、ヌードマウスの盲腸壁に移植し、腫瘍の増殖、マウス生存率、肝転移を評価した。また、担癌マウスをPDGFRリン酸化阻害薬であるイマチニブで治療を行い、腫瘍増殖・転移抑制効果を検討した。【成績】静脈注射したMSCは原発巣、肝転移巣の腫瘍間質へ特異的に集積した。混合移植群では、単独移植群に比し、有意に腫瘍が大きく、肝転移が促進された。病理学的検討においても混合移植群では、細胞増殖能と血管新生能は促進し、アポトーシスは抑制されていた。イマチニブを投与することにより、MSCの腫瘍部への集積や生着が阻害され、MSCによる癌の増殖・転移促進作用も阻害された。【結論】骨髄由来MSCの腫瘍増殖・転移促進効果にはPDGF/receptorシグナルが重要であることが示唆された。
索引用語 間葉系幹細胞, 腫瘍間質