セッション情報 パネルディスカッション10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における分子標的治療

タイトル 消PD10-7:

ROCK/Rho-kinaseによる大腸がんの抑制機能について~新規治療標的の可能性~

演者 足立 政治(岐阜大・薬理病態学DELIMITER岐阜大・1内科)
共同演者 森脇 久隆(岐阜大・1内科), 小澤 修(岐阜大・薬理病態学)
抄録 はじめに:低分子量GTP結合タンパク質の一つであるRhoは細胞骨格の形成や細胞接着に重要な役割を果たしている。ROCK/Rho-kinaseはRhoのエフェクター分子の一つであり、各種細胞の形態制御、遊走などの生理機能に関与し、がん細胞においては細胞周期や悪性化、浸潤、転移に関わるとされているが、その詳細な役割は十分に解明されていない。今回我々は、大腸癌細胞SW480の増殖能・遊走能におけるRho-kinaseの役割について検討した。方法及び結果:大腸癌細胞SW480の増殖能・遊走能に対するRho-kinaseの役割について、Rho-kinase inhibitorであるY27632を用いて検討した。まずMTT assayにおいて、Y27632をSW480に添加すると細胞増殖は促進された。さらにmigration assayにおいてY27632の添加にてSW480の遊走能は亢進した。また抗EGFR抗体をSW480に添加すると細胞増殖は抑制されることから、SW480の細胞増殖はEGFRに依存していることが明らかとなった。Western Blot法においては、EGFによるAkt/GSK-3β系の活性化はY27632により増幅され、これに続くRbのリン酸化の亢進やcyclin D1の蓄積がみられ、細胞周期を促進させた。また免疫蛍光染色法において、Y27632の添加によりfocal adhesion の形成が阻害され、この形成阻害はAkt阻害剤で回復した。まとめ:Rho-kinaseは大腸癌細胞SW480において、Akt/ GSK-3系を介した細胞増殖および細胞遊走能亢進に対して抑制的に作用していた。我々の知る限りでは、この大腸がんにおけるRho-kinaseの抑制機能は初めての報告である。今後Rho-kinaseが新規分子標的となりうる可能性が示唆され、大腸がん治療戦略に新たな展開をもたらすものと考える。
索引用語 Rho-kinase, colon cancer progression