セッション情報 パネルディスカッション10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における分子標的治療

タイトル 消PD10-8:

クローン病におけるCT enteroclysis/enterographyを用いた生物学的製剤の治療効果判定の試み

演者 橋本 真一(山口大大学院・消化器病態内科学)
共同演者 清水 建策(山口大附属病院・光学医療診療部), 坂井田 功(山口大大学院・消化器病態内科学)
抄録 【目的】近年infliximabやadalimumabといった生物学的製剤がクローン病治療に使用可能となり,クローン病患者のQOLは確実に向上した.一方で臨床的寛解の患者でも炎症の持続に伴う消化管合併症の進展により手術が必要となる場合も多く,粘膜治癒の重要性が議論されている.今後のクローン病診療において,臨床的寛解状態の患者における治療効果判定を的確に行い,消化管合併症の進展予防および手術回避が課題の一つと考えられるが,病変が広範囲におよぶクローン病では正確な炎症の評価が難しいことも多い.欧米ではクローン病における小腸病変の評価にCT enteroclysis/enterography(CTE)が有用であるとの報告が多数なされている.当科においても2008年より導入しており,生物学的製剤の治療効果をCTEにてどのように評価できるか検討した.【方法】2009年1月より2011年3月までに当院にて施行したCTE 99件のうちクローン病患者に対して施行した19症例24件に対して検討を行った.【成績】19症例のうち生物学的製剤の前後でCTEを施行したのは4例であり,男性2例,女性2例で小腸大腸型3例,大腸型1例であった.治療前のCDAIは110~338(平均214.8)であり生物学的製剤導入後は62~197(平均114.3)となり,3例で改善を認め1例は不変であった.CDAI値の改善を認めた3例ではCTEでも壁肥厚・粘膜造影効果の改善および腸間膜脂肪織濃度の低下を認め,大腸内視鏡検査を施行した症例では実際に粘膜治癒が確認できた.CDAI値が不変(110→110)の症例ではCDAI値上は寛解にもかかわらずCTEにて腸管の炎症所見を認め,生物学的製剤投与後も持続したため,免疫調節薬を追加した.すべての症例でCTEに伴う偶発症は経験しなかった.【結論】CTEは臨床所見や血液生化学検査では評価不能な腸管の炎症を評価可能であり,腸管合併症の進展予防に向けた的確な治療方針の決定に有用であると考えられた.
索引用語 クローン病, CT enteroclysis