セッション情報 |
パネルディスカッション10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
消化器疾患における分子標的治療
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タイトル |
肝PD10-11:肝線維化に対する血管新生因子VEGFおよびインスリンをターゲットとした分子標的治療
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演者 |
吉治 仁志(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科) |
共同演者 |
野口 隆一(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科) |
抄録 |
【目的】肝線維化の進展には血管新生を含む複雑なネットワークが関与し、線維化から肝発癌へと至る一連の病態形成が考えられている。我々はこれまでに、インスリン抵抗性 (IR) が血管新生を介して肝線維化進展に重要な役割を果たしていることを報告してきた。血管新生因子VEGFに対する分子標的治療薬Sorafenibが我が国においても進行肝癌に対し認可されたが、同薬剤を肝線維化と発癌の抑制のために投与するには副作用や長期安全性など解決すべき問題が多く残されている。今回は、IR改善作用と血管新生阻害作用を併せ持つ分枝鎖アミノ酸 (BCAA) とACE阻害薬 (ACE-I) を併用し、VEGFおよびIRを標的とした肝線維化治療について検討した。【方法】代償性肝硬変患者に対し75gOGTTを施行した。IRを伴う耐糖能障害と診断した患者54例について書面にて同意を得た後、BCAA (Livact: 12g/day) + ACE-I (perindopril: 4mg/day) を連日投与し、48ヶ月後まで肝線維化マーカーおよびTGF-βの推移を検討した。さらに血清VEGFと共に、血清アルブミン (Alb)、インスリン (IRI)、およびIRの指標であるHOMA-Rの変化についても対照群(非投与群)と比較検討した。【結果】48ヶ月間の観察において、ヒアルロン酸、 7S-コラーゲンなどの血清肝線維化マーカー、血清TGF-βレベルの上昇は対照群に比してBCAA+ACE-I投与群で有意に抑制されていた。一方、血清Alb値はBCAA+ACE-I投与群において有意に高値であった。観察開始6か月後では、BCAA+ACE-I 投与によりIRIは有意に低下し、HOMA-Rは改善した。血清VEGFは対照群では上昇していたが、BCAA+ACE-I投与により有意な低下を認めた。【結論】 BCAA+ACE-I投与は肝硬変患者において肝予備能を改善させると共に肝線維化進行を抑制し得る可能性が示唆された。作用機序として血管新生抑制と IR改善の協調効果が考えられ、VEGFおよびインスリンを分子標的とする肝線維化治療に期待がかけられると考える。 |
索引用語 |
血管新生, インスリン抵抗性 |