セッション情報 パネルディスカッション10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器疾患における分子標的治療

タイトル 消PD10-16:

胆嚢癌に対するmTOR とMAPKを標的とした治療法の検討

演者 毛利 大(東京大・消化器内科)
共同演者 伊地知 秀明(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科)
抄録 【目的】胆嚢癌は切除不能な状態で診断されることも多く、膵癌に準じた化学療法が行われるが、その予後は不良である。近年各種癌においてチロシンキナーゼ阻害薬を中心とした分子標的薬の臨床応用が進み、新たな臨床試験も進行していることに比べ胆嚢癌の分野は遅れているといわざるを得ない。今回我々は、mTOR経路及びMAPK経路を標的とした阻害剤の抗腫瘍効果について検討した。【方法】1995年11月から2007年6月までに当院にて切除された膵胆管合流異常のない胆嚢癌 30例の手術検体を用いて、レーザーマイクロダイセクション法にてDNAを抽出しKRAS、BRAFの変異を検討するとともに、p-ERK、p-S6の発現を免疫染色にて検討した。ヒト胆嚢癌のcell line TGBC1TKBに対しMEK阻害剤CI-1040 とmTOR阻害剤RAD001を投与し、in vitroでの効果をウェスタンブロット、FACS、MTT assayにて検討し、xenograft modelを用いてin vivoでの効果を検討した。【成績】臨床検体において、KRAS変異は1/19のみであり、BRAF 変異は1例も認めなかった。免疫染色では、p-ERKが10/30、p-S6が18/30で陽性であり、p-ERK陽性例はp-S6 陽性例と重複していた。CI-1040、RAD001は、それぞれERK、S6のリン酸化を強く抑制し、in vitro 及びin vivoにおいて単独でも増殖抑制効果を示したが、併用により増殖抑制効果が増強された。【結論】今回の解析では、胆嚢癌におけるmTOR、MAPK 経路の関与と、同シグナルを標的とした阻害剤が治療に有効である可能性が示唆された。今後は既存の抗癌剤との比較・併用が検討課題である。
索引用語 胆嚢癌, 分子標的薬