セッション情報 |
パネルディスカッション10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
消化器疾患における分子標的治療
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タイトル |
消PD10-17:膵発癌モデルマウスを用いたGemcitabineとErlotinibの効果・メカニズムの検討
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演者 |
宮林 弘至(東京大・消化器内科) |
共同演者 |
伊地知 秀明(東京大・消化器内科), 小池 和彦(東京大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】ヒトの切除不能膵癌に対する化学療法の第一選択はGemcitabine (GEM)で、それを凌駕する治療法は確立されていない。GEMとEGFR阻害剤Erlotinibの併用療法はGEM単独と比較して生存期間の有意な延長が認められ、本邦でも実臨床に導入される予定である。一方、Kras変異が90%以上に存在する膵癌におけるErlotinibの効果の詳細は分かっていない。われわれは、ヒト膵癌のモデルとなる内因性KrasG12D発現+Tgfbr2ノックアウトモデルを用いて、GEMとErlotinibの効果・メカニズムについて検討した。【方法】膵発癌モデルマウスに対し、GEM単独、GEM+Erlotinib併用投与を行い生存期間を比較した。生後7週で膵組織を回収してリン酸化EGFR、リン酸化ERKなどの免疫染色やWestern blot、リン酸化受容体型チロシンキナーゼ(RTK)アレイを用いて解析し、GEMとErlotinibが受容体や細胞内のシグナルへ与える影響を検討し、作用機序の解明を試みた。【成績】平均生存日数は無治療群45日に対し、GEM単剤が60日、GEM+Erlotinib併用が74日と併用群で生存期間が大きく延長した。Western blotでGEM単独群ではリン酸化ERKの活性化が見られ、Erlotinib併用投与群ではそれが抑制され、免疫染色でも同様の結果を得た。リン酸化RTKアレイでは、EGFR発現亢進のあるGEM群でリン酸化HER2の活性化を認め、Erlotinib併用でそれが抑制された。本マウスの膵癌細胞株でEGFRの活性化に伴いEGFRとHER2のheterodimerが形成され、Erlotinib併用でそれが抑制された。またGEM投与により膵癌細胞からEGFRリガンドの発現亢進が認められた。【結論】GEM単独投与に比較してErlotinib併用投与は、本膵癌モデルにおいて生存期間を大きく延長した。その作用機序としてGEM投与群でみられるEGFR/HER2とその下流のMAPKシグナルの活性化をErlotinibが抑制することが示された。本モデルはヒト膵癌の組織像をよく近似し、薬剤の作用機序の詳細な解析及び新規薬剤の効果の検討をこのようなモデルを用いて実臨床と連動させていくことが有用と考えらえた。 |
索引用語 |
分子標的治療, モデルマウス |