セッション情報 パネルディスカッション12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

切除不能進行消化器がんに対する治療選択

タイトル 消PD12-1:

T4食道癌に対する導入化学療法の治療成績

演者 加藤 剛(がん・感染症センター都立駒込病院・外科)
共同演者 三浦 昭順(がん・感染症センター都立駒込病院・外科), 出江 洋介(がん・感染症センター都立駒込病院・外科)
抄録 背景:T4食道癌は,初回治療として化学放射線療法(CRT)が主体とされている.しかし,T4食道癌では診断時に隣接臓器との瘻孔の問題,高度リンパ節転移を認める症例も少なくなく,治療開始後すぐに遠隔臓器転移(M1)が問題となることもある.また,全身状態,特に肺合併症を併存していることも少なくなく,CRTを優先すべきかどうか治療選択に苦慮する場合が多い.目的:T4M0食道癌に対する,CRT前に使用した導入化学療法の効果,予後について検討した.対象と方法:2000-2009年までに当科でcT4M0食道扁平上皮癌と診断し,初回治療として手術療法を選択しなかった168例中,導入化学療法+CRTを施行した66例を対象とし,他の治療群と比較,その予後,有害事象についてretrospectiveに検討した.導入化学療法:FAP療法(5-FU 700mg/m2/日/24時間持続静注day1-5,CDDP 14mg/m2/日/3時間day1-5,ADR 30mg/m2/1時間day1)は,増悪を認めない限り4週毎に施行,その後60Gy以上の根治的CRTを施行した.結果:1.内訳:168例中,導入化学療法+CRT施行群(導入化学療法群)は66例,CRT先行群(CRT群)は48例,診断時,瘻孔形成を認めた,あるいは肺合併症が高度であったなどの全身状態が不良で,CRTを選択できず化学療法を選択した症例(化学療法群)は38例,治療ができなかった症例(無治療群)は16例であった.2.効果:導入化学療法の奏効率(CR+PR)は40.9%,CRは1例,その後のCRTの奏効率は62.1%,CRは10例であった.3.予後:導入化学療法群の50%生存期間(MST)は11.6ヶ月,1年生存率(1生率)は48.5%であった.CRT群は7.7ヶ月,35.1%,化学療法群は6.6ヶ月,17%,無治療群は5.5ヶ月で1生率はなかった.特に,導入化学療法が奏効した群ではMSTが17.5ヶ月,1生率が70.4%と非奏効群の9.1ヶ月,48.5%と比較し有意に予後延長効果を示した.4.有害事象:治療関連死は導入化学療法群66例中5例(7.6%),CRT群では48例中9例(19%)に認められた.まとめ:T4M0食道癌における導入化学療法+CRT療法は有用である.
索引用語 T4食道癌, 導入化学療法