抄録 |
【目的】当院での直腸癌における側方リンパ節郭清の適応は,深達度T3以深の症例,またはリンパ節転移を疑う症例としている.深達度は術前診断にて判断しているが,その妥当性について,また側方リンパ節郭清の妥当性について検討した.【対象と方法】1982-2009年までに根治度A,Bの手術を行った直腸腺癌1105例を対象とした.検討1:術前深達度診断と病理学的深達度診断の一致率について検討した.検討2:リンパ節転移および側方リンパ節転移率を検討し,多変量解析にてリンパ節転移の危険因子を同定した.【結果】検討1:全体での深達度診断一致率は66.6%であった.術前深達度別の一致率はTis,T1,T2,T3,T4で各々78.8%,71.2%,64.6%,75.0%,15.8%であった.術前T4診断症例で特に過大評価が多くみられた.しかし側方郭清の適応のpT3以深での診断率は96.6%であった.検討2-1:リンパ節転移は35.3%にみられ,部位別ではRaで40.1%,Rb&Pで32.5%であった.深達度別ではpT1,pT2,pT3,pT4で各々12.2%,29.5%,46.3%,46.4%であった.リンパ節転移危険因子は,組織型(tub2,por&muc),術前深達度(T3,4),ly(+),v(+)が抽出された.検討2-2:側方リンパ節転移は4.9%にみられ,部位別ではRaで3.2%,Rb&Pで5.9%であった.深達度別ではpT1,pT2,pT3,pT4で各々0%,4.1%,6.1%,21.4%であった.側方リンパ節転移危険因子は部位(RbP),組織型(por&muc),中枢リンパ節転移あり,ly(+),v(+)が抽出された.【まとめ】術前深達度診断では,T4で過大評価する傾向を認めたが,T3以深の診断率は96.6%とほぼ診断出来ていた.またリンパ節転移の危険因子として組織型,術前深達度,脈管侵襲が抽出されたが,病理診断での深達度は抽出されなかった.直腸癌の側方リンパ節郭清の適応としては,T3以深の症例,リンパ節転移を疑う症例,低分化腺癌や粘液癌の症例では考慮する必要があると思われた.当院の術前深達度診断は妥当と考えられ,その判断に基づく側方リンパ節郭清の適応も妥当と考えられた. |