セッション情報 パネルディスカッション12(消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

切除不能進行消化器がんに対する治療選択

タイトル 消PD12-2:

切除不能進行胃癌治療におけるS-1を用いた個別化医療への展望~5FU代謝関連酵素を中心に

演者 東 瑞智(北里大・消化器内科)
共同演者 成毛 哲(北里大・消化器内科), 小泉 和三郎(北里大・消化器内科)
抄録 現在、切除不能進行胃癌に対しては殺細胞性抗がん剤の集学的化学療法が行われている。SPIRITS Trial (Koizumi W et al; Lancet Oncol. 2008 Mar;9(3):215-21)により、現在の日本における標準治療はS-1+CDDP(SP療法)が質の高いエビデンスとして考えられている。標準治療の中心として考えられているのが、5FUのプロドラッグであるテガフールに5FUの分解酵素であるDPD(Dihydropyrimidine dehydrogenase)を可逆的に阻害するギメラシル(CDHP)と消化管毒性を軽減するオテラシルカリウム(Oxo)を配合した、経口抗がん剤であるS-1である。近年、Pharmacogenomicsを用いた研究が行われ、5FU代謝経路での酵素の一つであるTS(Thymidylate Synthase)遺伝子発現が効果予測因子として注目されており、上記臨床試験の検体を使ったPharmacogenomics研究(Koizumi W et al; Int J Cancer. 2010 Jan 1;126(1):162-70)や過去の報告など(Yamada Y et al; ASCO 2009 annual meeting abstr4535、Koizumi W et al; Anti-Cancer Drugs 2008 19:819-824)から、TS、TP(Thymidine Phosphorylase)、DPD(Dihydropyrimidine Dehydrogenase)の遺伝子発現の組み合わせによる、今後の切除不能進行胃癌治療における個別化医療へのストラテジー確立に向けての取り組みを探求した。Low TS and Low TP群ではS-1単独療法(18.2M)はSP療法(9.4M)よりもOSは良好である傾向で(p=0.1775)、それ以外のHigh TS and/or High TP群では標準治療の通りSP群(12.7M)がS-1単独群(7.5M)よりもOSは良好であった(p=0.007)。また、High TS and/or High TPでLow DPDであった場合は、Capecitabineに対する感受性が高いと考えられ、Her2陽性であった場合に、Capecitabine+CDDP+Trastuzumabによる治療が今後は選択されるべきかもしれない。また、SPにDocetaxelを加えた3剤併用であるDCS療法の将来の位置付けについても考察したい。
索引用語 個別化医療, 進行胃癌