抄録 |
【目的】これまで我々は,切除不能進行胃癌に対して有効3剤をup frontに投与するCDDP+Docetaxel+S-1(DCS)療法を行い根治切除が望める奏功例に対して積極的に手術を施行するとともに,2次治療以降も有効薬剤の使い切りを意図した治療を行い良好な成績を報告してきた(BJC 2007; ASCO 2008,2011; CCP 2009).そこで,今回それらの症例を解析し、切除不能進行胃癌に対するDCS療法の最適な二次治療や切除例の術後補助化学療法を含めた治療選択につき検討したので報告する.【対象】2002年からDCS療法の臨床試験に登録した計65例.【成績】年齢中央値は65歳,PS0/1/2:48/15/2,肝/腹膜/骨/卵巣/肺/LN転移:20/19/6/1/4/24 例. 中央値は4コース(2-11)でRRは87.7%.2次治療以降を受けたのは46例(96.5%)であり,PSが良好かつ肝転移等の標的病変を有する症例ではCPT-11を,PS不良・有腹水例ではTaxanを含むレジメが選択される傾向にあった.奏功率はCPT-11+CDDPが35.3%と良好で,それ以外のレジメを選択した場合に比し有意に良好であった.3次治療までにCPT-11, CDDP, Taxan, S-1のactive drugsをすべて投与された症例では予後が良い傾向が認められた.切除可能となったのは13例、2次療法以降で4例であった.12例(70.6%)でdown stageし16例で根治度Bの切除が達成された.切除後12例でS-1、2例でDS後S-1が投与され,それらの術後1年までのS-1投与完遂率は66.7%であり認容性は十分と考えられた.全切除例の3年生存率74.0%、MST48.4Mと非切除例の15.5%、MST16.7ヶ月と比し有意(HR 0.29, 95%CI 0.1511-0.5597, p=0.0002)に予後が良好であった.【結語】今後、Her2陽性切除不能進行再発胃癌に対してはHerceptin併用レジメの奏功が期待出来るが,約8割を占めるHer2陰性胃癌に対しては高い奏功率を示すDCSレジメは有効な1次治療となりdown stageが得られれば根治術を選択することで長期生存が期待できる.また、2次療法以降ではCPT-11 based regimen を選択しactive drugsを有効に使いきることで生存期間の延長に寄与できる可能性が示唆された. |