セッション情報 パネルディスカッション13(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝転移の治療

タイトル 外PD13-3:

大腸癌肝転移に対する最大効果を確認する術前化学療法の妥当性

演者 竹内 正昭(久留米大医療センター・外科)
共同演者 緒方 裕(久留米大医療センター・外科), 白水 和雄(久留米大・外科)
抄録 【はじめに】大腸癌肝転移症例に対する術前化学療法(化療)には、切除率の向上や微小転移の制御が期待される。大腸癌肝転移に対する肝切除の有用性に異論はないが、術前化療の期間や外科切除のタイミングは確立していない。一般的には用いるレジメンの奏功期間、肝障害や周術期合併症などを考慮し、3~4か月程度の治療期間を設定している施設が多い。教室では、術前化療を臨床の感受性試験ととらえ、切除可能と思われる肝転移巣に対しても微小転移を制御する目的で治療期間は設定せずに効果が最大化するまで行っている。今回、その妥当性を検証した。【対象と方法】2008年4月から2011年3月まで、術前にFOLFOX+Bevacitumab (BV)、FOLFIRI+BVまたはXELOX+BV の化療後に外科的切除(ラジオ波焼灼(RFA)を含む)を行った大腸癌肝転移例21例を対象とした。測定を行っていた症例の術前ICG15分値、肝切除例の術中出血量、術後の合併症、肝切除例における肝組織障害の程度を評価した。【結果】画像と腫瘍マーカーによる術前化療の最大効果を確認した症例(A群)は14例、最大効果に関わらずFOLFOX+BV治療予定6コース後の肝切除例(B群)が6例、肝膿瘍合併による切除(9コース施行)が1例であった。A群の術前化療施行コースの中央値は14コース(6~23コース)であった。A群は肝転移単独が9例、肝+肺転移が3例、肝+腹膜転移が1例、肝+骨転移が1例、B群は全例肝転移単独であった。A群は切除単独が5例、RFA単独が7例、切除+RFAが2例であった。A群とB群間に術前ICG15分値に差異を認めず、肝切除例では化療期間と術中出血量に関連性はなかった。両群に重篤な術後合併症は認めず、A群の肝切除例7例+肝膿瘍合併による切除例1例の肝組織障害(Rubia-Brandt分類による類洞拡張、脂肪症)の程度はB群のそれと同等で、また抗癌剤長期投与の影響は軽微であった。【結語】周術期合併症、肝組織障害の検討から大腸癌肝転移に対する最大効果を確認する術前化療の妥当性が示された。今後、多数例での遠隔成績の検討が必要である。
索引用語 大腸癌肝転移, 術前