セッション情報 パネルディスカッション13(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝転移の治療

タイトル 外PD13-5:

大腸癌肝転移における転移病巣因子からみた術後補助療法の考え方

演者 小寺 由人(東京女子医大・消化器外科)
共同演者 井上 雄志(東京女子医大・消化器外科), 山本 雅一(東京女子医大・消化器外科)
抄録 大腸癌肝転移巣の病理学的な因子による臨床経過の相違から、補助療法の役割について検討(対象)2001年1月から2008年に、初回根治切除施行された156例中、肝転移巣に対して病理学的な検討がなされた90例(方法)転移巣を原発性肝がん取扱い規約に則り、門脈浸潤(vp)、静脈浸潤(vv)、胆管浸潤(b)の有無を検討し、脈管浸潤の有無が生存率に与える影響について検討した。また術後補助療法の役割も検討した。(結果)同時性転移は43例、異時性転移が47例。肝転移の程度は、GradeAが43例 GradeBが30例 GradeCが17例。28例は無再発にて経過し、62例に再発を認めた。再発部位は42例が肝臓(31例が単独)で22例は、肺転移(11例が単独)11例がその他臓器への転移であった。 肝転移巣の病理学検討はvp陽性が34例 vv陽性が12例、b陽性が19例であり、合わせて51例(56.6%)を脈管浸潤陽性とした。肝術後生存率は、脈管浸潤陰性例の3年生存は85%に対し、陽性例の3年生存率は56%と脈管浸潤陽性例は有意にその生存率の低下認めた(p=0.004)肝転移程度であるGrade 分類別に同様の検討をするも、有意差は認めないものの、脈管浸潤陽性例で成績が悪い傾向にあった。これら成績の術後補助療法による影響を検討した。79例に肝術後補助療法がなされていた。補助療法はUFT/Uzelなどの経口抗癌剤が中心であったが、2006年以降の13例にオキサリプラチンなどの新規抗癌剤が使用されていた。経口抗ガン剤使用例において、脈管侵襲陽性例は生存率の低下を有意に認めた(p=0.01)一方、新規抗がん剤使用例では、脈管浸潤陽性例においても、従来の経口抗癌剤使用例よりも、中央値の引き上げを認めた。(1280日→1537日)(結語)肝転移巣に脈管浸潤は半数以上に認めた。さらに脈管浸潤陽性例は予後不良であった。脈管浸潤陽性例では、新規抗癌剤を使用することで生存率の延長を認める可能性があると示唆された。
索引用語 大腸癌, 肝転移