セッション情報 パネルディスカッション13(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会合同)

肝転移の治療

タイトル 外PD13-13:

当科における胃癌肝転移切除症例の検討

演者 深谷 昌秀(名古屋大大学院・腫瘍外科学)
共同演者 板津 慶太(名古屋大大学院・腫瘍外科学), 梛野 正人(名古屋大大学院・腫瘍外科学)
抄録 <背景と目的>胃癌肝転移は多発発生することが多く、また腹膜播種、大動脈周囲リンパ節などその他の非治癒因子を伴うことが多く、大腸癌肝転移と比べて手術適応になることは非常に少ない。また現時点では胃癌肝転移症例の明確な手術適応は決まっていない。<目的>胃癌肝転移の手術適応を明らかにする。<対象と方法>1987年1月から2010年12月までの23年間に肝切除を行った胃癌肝転移症例19例(同時性9例、異時性10例)を臨床病理学的に検討し、単変量解析、多変量解析を行い、予後因子を抽出した。<結果>全症例の1年生存率、3年生存率、5年生存率はそれぞれ、61%、31%、23%、MSTは1年5カ月あった。5年以上の長期生存は3例あり、いずれも異時性、単発症例であった。単変量解析で有意な差を認めた因子は、異時性/同時性(MST 3年11ヶ月/1年1カ月), 単発/多発(MST 2年6カ月/9ヵ月), 片葉/両葉(MST 2年6カ月/1年), その他の非治癒因子(腹膜播種、大動脈周囲リンパ節)の有無(MST 9ヵ月/2年4ヵ月)であった。組織型(Intestinal Type/Diffuse Type), 腫瘍の最大径, 漿膜浸潤の有無, リンパ節転移(N0,1/N2,N3), 補助療法の有無に関しては有意な差を認めなかった。多変量解析では単発/多発とその他の非治癒因子の有無で有意な予後因子として抽出された。再発症例13例中9例で残肝再発を認めた。<考察>今回の検討では異時性、単発で、その他の非治癒因子のない症例が肝切除の適応となる。しかし19例中7例はTS1が普及する2000年以前の症例であり、今日ではTS1+CDDPなどさらに奏効率の高い治療があるので、現在、当科では同時性症例(片葉)でも術前化学療法により腫瘍が縮小すれば、切除適応としている。また残肝再発が多いので、異時性でも術前化学療法を加え切除している。<結語>現時点では異時性、単発で、その他の非治癒因子のない症例が肝切除の適応と考える。
索引用語 胃癌, 転移性腫瘍