抄録 |
下部消化管の改訂にあたっては、消化器専門医としての態度=プロフェッショナリズムを念頭に研修を重ねるように目標を設定しなおした。日本内科学会カリキュラムを基本としたが、主として次に示すような項目につきブラッシュアップして記載した。1.医療連携における態度の強化:消化管出血や悪性新生物などの診療においては放射線科医や消化器内科医、消化器外科医、臨床病理医など、科をまたがって診療にあたるため、医師間の協調が重要な位置を占める。知識を患者に役立てる道具に変化させるためには、人間関係、定期的カンファレンス、情報交換、患者―医師関係が重要であることを念頭に各項目の目標を一新した。2.食事・栄養療法・生活指導における態度の強化:消化器医として消化吸収の知識や栄養療法の実践は基礎的項目であるが、従来は記述が乏しかった。この分野の記述の拡充に加え、栄養士との共同作業、飲酒指導に対する精神科医との連携、喫煙指導に対する禁煙外来医との連携を重視した目標を掲げた。3.最新の知見を携えて診療にあたる態度の強化:炎症性腸疾患などの新しい治療が次々と開発されている分野の診療においては最新の知見を入手して診療にあたる態度が消化器専門医として求められている。これらの分野においては、厚生労働省のホームページなどで情報開示が行われている。情報の刷新に対処するため、これらのweb情報を参考資料として提示した。4.新規治療法・診断法への社会的要求・要望を理解する態度の強化:画像強調内視鏡や内視鏡的粘膜下層剥離術など、内視鏡分野の進歩は著しいが、先進医療としてのみ認可されているものや、診断に施設間で統一見解がないものがある。これらの分野は消化器専門医として習熟すべき範囲を超えているものの、社会的要求・要望を理解し、患者が適切な加療が受けられるよう目標を掲げた。以上のように、コンピテンスを基盤とした新しいカリキュラム理論を基本にして下部消化管研修カリキュラム改訂を提案した。 |