抄録 |
【緒言】GIST肝転移に対する治療の原則は薬物療法だが,二次耐性獲得,副作用等の問題があり,外科的治療介在による予後向上が期待されている。GIST診療ガイドラインでもGIST肝転移に対する治療として,一定条件を満たす場合に手術療法が選択枝として挙げられている。今回,遺伝子解析結果をもとにGIST肝転移に対する外科的治療の適応について検討した。【方法・結果】1:肝切除先行orイマチニブ(IM)。肝転移GISTは全身性疾患であり,薬物治療を選択するのが一般的だが,われわれは遺伝子解析から切除を先行できる症例を明らかにした。原発巣と肝転移巣の比較検討を行った。IM非投与で他病変のない12例の肝転移切除検体の免疫染色および遺伝子検索を行い,MIB-1<5%かつc-kit遺伝子領域LOH(-)の肝転移症例では,外科切除を先行させることで予後を向上できる可能性を報告した(Cancer Sci,97(2),2006,98(11),2007)。2:分子標的療法中におけるsurgical intervention 。GIST肝転移腹膜転移に対しIM投与し二次耐性、スニチニブ投与するもPDとなり、肝切除および腹膜播種巣切除を施行。複数の耐性病変で異なる二次変異を認めた。転移巣はpolyclonalであるため、二次耐性が生じる前、分子標的薬奏効中に積極的に肝切除を考慮すべきである(Int J Clin Oncol, in press)。3:肝転移抑制を目的とした標的分子の同定。GISTの原発巣と肝転移巣における遺伝子発現をマイクロアレイにて比較し,肝転移に関与する新規分子マーカーversican, CD9を同定した(Cancer Sci, 102(4),2011)。原発巣切除後の補助療法の指標や肝転移予防新規分子標的となり得る。【結語】GIST肝転移に対する治療において,手術先行症例の選択に遺伝子検索が有用である。分子標的薬が奏効中に積極的に肝切除を考慮すべきである。 |