セッション情報 パネルディスカッション15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

食道癌に対する内科的治療と外科的治療の接点

タイトル 内PD15-5:

T1N0M0表在食道癌に対する内視鏡治療を先行した治療戦略

演者 飯塚 敏郎(虎の門病院・消化器科)
共同演者 菊池 大輔(虎の門病院・消化器科), 貝瀬 満(虎の門病院・消化器科)
抄録 【目的】内視鏡治療の進歩に伴い、術前深達度診断が難しいMM・SM1の病変やこれまで内視鏡治療の適応にならなかったSM2の病変も内視鏡的切除が可能となり、その組織学的所見を踏まえたうえで追加治療を考慮するといった治療戦略が可能となった。そこでT1N0M0表在癌に対する内視鏡治療を先行した症例をretrospectiveに解析し、その成績を明らかにすることを目的とした。【方法】1998年1月から2010年8月までに食道扁平上皮癌に対して内視鏡治療(2005年3月まではEMR、それ以降ESD)が行われ、組織学的にT1a-MM~SM2と診断された154例を対象とした。内視鏡治療に伴う偶発症の頻度、追加治療の内訳とその後のフォローアップ期間における再発の頻度、さらには全体の5生率を求めた。【結果】病変はM3:85、SM1:30、SM2:39、脈管侵襲陽性例は74例であった。内視鏡治療においては、一括切除率83%(ESDでは100%)、内視鏡治療に伴う偶発症は6例(3.9%)で、穿孔2例、後出血1例、肺炎3例であった。内視鏡治療後に行った追加治療の内訳は、手術:29例、化学放射線療法(CRT):63例、フォローアップ(F群):62例であった。平均観察期間は手術:57.5カ月、CRT:38.6か月、F群:50.8カ月であった。局所再発は1例も認められなかった。再発は10例に認められ、7例で縦隔、1例で頚部、2例で腹部リンパ節再発であった。CRT群で5例、F群で5例であった。組織学的にMMで脈管陰性が3例、MM脈管陽性が2例、SM1が3例、SM2が2例であった。5例が原病死した。5年生存率は手術:100%、CRT:76.7%、F群81.1%であった(p=0.28)。【結論】MM-SM2の表在食道癌に対する内視鏡治療は安全に施行が可能であった。治療選択時点でのバイアスがあるものの、F群とCRT群において再発症例が認められた。したがってcN0表在食道癌においては、内視鏡治療を先行し追加治療を行うことは妥当な治療であると考えられるが、加療後のフォローアップの重要性が示唆された。
索引用語 食道癌, 内視鏡治療