抄録 |
【目的】術前CRT後の側方転移の診断と側方郭清の適応について検討。【対象】対象は、術前短期CRT(対向2門4Gy×5日+UFT400mg×7日)と側方郭清を施行して治癒切除となった治療前cT3, T4の下部直腸癌82例。観察期間中央値4.9年。【方法】1) MRIにてCRT前(74例)および後(77例)の側方領域最大リンパ節の最大径を測定し、組織学的側方転移有無をendpointとしてROC曲線を参考としcutoff値を決定した。2)種々の側方転移リスク因子(MRI所見、病理組織所見、腫瘍マーカー等)について疾患特異的5年生存率、無再発生存率、および局所再発率を算出し、側方転移頻度との積を用いてリスク因子別の側方郭清のsuvival benefit, disease-control benefit, およびlocal control benefitを比較検討した。【結果】1) 側方転移は15 例 (18.5%)に認めた. CRT前後いずれにおいても最大側方リンパ節の最大径は側方転移有無と有意に相関し、cutoff値は5mmが最適と考えられた。2)側方転移陽性例の5年生存率は 65.5%, 全症例における側方郭清のsurvival benefitは6.2 pointであった. CRT前MRIで5mm以上の側方リンパ節有 (28例) vs. 無(46例)の側方郭清のsurvival, disease-control, およびlocal control benefitはそれぞれ32.2 vs. 6.4, 29.3 vs. 5.0, および36.0 vs. 6.2 pointであった、一方、CRT後MRIにて5mm以上の側方リンパ節有(18例) vs. 無(59例)の場合はそれぞれ38.9 vs. 10.3, 35.9 vs. 8.1, および43.6 vs. 10.1 point。MRI所見は他よりも優れた適応指標であった。【結語】1) CRT後MRIにおける最大側方リンパ節径5mm以上の症例が最も予後改善効率のよい側方郭清の適応と考えられた。2)CRT前MRIにおける最大側方リンパ節径5mm以上を適応とした場合は、効率は若干劣るものの、郭清しないことのリスクは低く抑えられると考えられた。 |