セッション情報 パネルディスカッション15(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

食道癌に対する内科的治療と外科的治療の接点

タイトル 外PD15-11:

他臓器浸潤を疑う局所進行食道癌に対するinduction CRTの治療成績

演者 西川 和宏(大阪府立急性期・総合医療センター・外科)
共同演者 岩瀬 和裕(大阪府立急性期・総合医療センター・外科), 高橋 剛(大阪府立急性期・総合医療センター・外科)
抄録 【緒言】他臓器浸潤を疑う局所進行食道癌に対しては、definitive CRT、induction chemotherapy、induction CRT等の治療方針がある。当センターでは同症例に対し、induction CRTを施行し可能ならば食道切除術を積極的に行ってきた。治療成績をretrospectiveに検討し、治療方針について考察した。【方法】対象は遠隔転移がない他臓器浸潤を疑う局所進行食道癌に対してinduction CRTを施行した77例。治療法はinduction CRT 40Gy後、CRT 10Gy以上の追加を行うか、あるいは可能な症例では手術を施行した。併用化学療法はFPあるいはlow dose FP。CRT を計50Gy以上施行した59例(definitive CRTと同等)をCRT群、CRT後外科切除18例をSG群とした。【成績】SG群とCRT群のMST,1,2,3年生存率はそれぞれ14.0M,66%,24%,18%と9.7M,46%,27%,23%で、有意差は認めなかった。SG群のCRTの奏効率は83%で、内訳はCR 0例PR 15例NC 3例PD 0例であった。NCであったT4症例では3例全例で癌遺残をきたした。SG群では18例中11例でR1-2であり、T因子による癌遺残7例、N因子による癌遺残4例であった。R0とR1-2症例のMST,1,2,3年生存率はそれぞれ30.6M,100%,57%,43%と11.2M,43%,0%,0%で、R1-2症例の予後は有意に不良であった。R1-2症例では11例中9例でN(+)であった。また、R0が得られたSG群ではCRT群に比し予後良好であった。SG群では、1例に気管膜様部損傷をきたし、縫合不全を2例、肺炎を3例、膿胸を3例、左反回神経麻痺を4例に認めた。【結語】局所進行食道癌に対するinduction CRTは、個別化治療の観点からその後の治療法の選別する上で有効なステップと考えられた。induction CRT後の食道切除術は、R0手術の際のみ有効であり、起こりうる重篤な合併症を考慮すれば、CRT無効例やリンパ節転移陽性症例では、慎重な適応が望まれる。
索引用語 局所進行食道癌, induction CRT