セッション情報 パネルディスカッション17(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌の時代的変遷と将来展望―内視鏡医の視点

タイトル 内PD17-1:

過去10年間における胃癌背景因子・診断精度および発見早期胃癌の変遷に関する検討

演者 水谷 勝(東京都がん検診センター・消化器内科)
共同演者 入口 陽介(東京都がん検診センター・消化器内科), 小田 丈二(東京都がん検診センター・消化器内科)
抄録 【目的】この10年間で胃癌背景因子・診断精度および発見早期胃癌にどのような変化が現われたのかを検討する。【方法】まず、1999年(前期)と2009年(後期)の各一年間におけるルーチン内視鏡検査所見から見た胃癌背景因子の違いと診断精度を検討した。次に1997年からの4年間と、2007年からの4年間に発見された早期胃癌を対象として、両者間の臨床病理学的特徴を比較検討した。【成績】ルーチン内視鏡検査所見について年齢を補正して有所見率を比較すると、萎縮性胃炎の頻度には差がなかったが、後期では胃・十二指腸潰瘍、過形成性ポリープが有意に減ったのに対し、胃底腺ポリープが有意に増えていた。診断精度について後期では生検施行率が有意に減っていたが、良性病変に対して行われる生検が減ったためであり、陽性反応適中度・内視鏡観察診断率の向上は認められなかった。発見早期胃癌について年齢を補正して多変量解析を行ったところ、治療法、占居部位、肉眼型で有意差が認められた。最近4年間に発見された癌は内視鏡治療例が有意に多く、占居部位ではL領域癌が有意に減り、肉眼型では複合型癌が有意に減った一方、陥凹型癌が有意に増えていた。【結論】萎縮性胃炎の頻度は同等ながら併存病変の有所見率に明らかな変化がみられたのは、萎縮の進行度の違いによるものと推測される。不要な生検が減っていたが、残念ながら胃癌診断能の向上は必ずしも得られていなかった。胃癌の肉眼型の違いは、一目で分かる病変が減ってきていることを示唆していると思われた。胃癌の占居部位の変化は、萎縮の進行度を含めた要因が総合的に関与していると思われるが、更なる検討が必要である。
索引用語 胃癌, 変遷