セッション情報 パネルディスカッション17(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌の時代的変遷と将来展望―内視鏡医の視点

タイトル 内PD17-2:

過去10年間の人間ドック発見胃癌の変遷からみた将来像

演者 赤羽 たけみ(奈良県健康づくりセンター)
共同演者 美登路 昭(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科)
抄録 【目的】近年、胃癌検診は死亡率を低下させるだけでなく、低侵襲治療が可能な早期癌発見率を上げることでQOL向上に寄与してきたと言える。過去10年間に人間ドックで発見された胃癌症例を対象に臨床病理学的所見の経年変化を検討し、検診発見胃癌の将来像を考察した。【方法】2000年から2009年までに当センター人間ドックを受診したのべ88,243名(平均年齢50.2歳)のうち胃癌発見症例77例を対象とし、2000年~2004年の43例を前半群、2005年~2009年の34例を後半群とし、年齢、癌占拠部位、肉眼病型、内視鏡治療率について比較検討した。さらに、組織型、早期胃癌の比率について治療後の最終病理診断が判明した56例(前半群24例、後半群32例)を用いて検討した。【成績】前半と後半において全受診者の平均年齢に有意差はなかった。胃癌発見率は前半0.098%、後半0.076%と減少傾向を示した。55歳以上の比率は前半51.2%(22例)、後半73.5%(25例)と有意に増加した。癌占拠部位ではU領域が前半7%(3例)から後半32.4%(11例)に、肉眼病型では隆起型が前半11.6%(5例)から後半29.4%(10例)に、組織型では分化型が前半25.0%(6/24例)から後半59.4%(19/32例)にそれぞれ有意に増加した。早期胃癌率は前半58.3%(14例)、後半78.1%(25例)と増加傾向を示し、なかでもM癌率は前半20.8%(5例)、後半46.9%(15例)と有意に増加した。内視鏡治療の比率は前半EMR7%(3例)、後半ESD29.4%(10例)と有意に増加した。【結論】今後、人間ドック発見胃癌として55歳以上のU領域に発生する分化型M癌の比率がますます増加し、内視鏡治療の適応症例が増えることが予想され、内視鏡治療部門の充実強化が望まれる。
索引用語 検診発見胃癌, 経年変化