セッション情報 パネルディスカッション17(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌の時代的変遷と将来展望―内視鏡医の視点

タイトル 内PD17-5:

早期胃癌症例における時代的変遷

演者 福田 信宏(朝日大村上記念病院・消化器内科)
共同演者 加藤 隆弘(朝日大村上記念病院・消化器内科), 井田 和徳(朝日大村上記念病院・消化器内科)
抄録 【目的】Helicobacter pylori(以下H. pylori)感染は,活動性胃炎,萎縮性胃炎,腸上皮化生へと進展し胃癌の発生と深く関連している.近年,若年者のH. pylori感染の陽性率が低下しており,今後胃癌の罹患が減少していくと思われる.そうした背景の中で胃癌の内視鏡的所見および病理学的所見について時代的変遷の検討をした.【方法】当院にて1986年から2010年までの25年間に手術切除または内視鏡的切除を行った早期胃癌症例516例を対象とした.患者背景,腫瘍の形態,病理学的所見について1986年から5年ごとに2010年までを第1群から第5群に分類し各年代間の比較検討をした.腫瘍の肉眼型や組織学的分化度については混在する場合優勢像にて評価した.また腫瘍背景粘膜の変遷として腸上皮化生についてもUpdated Sydney Systemに基づいてスコア化し評価した.【成績】性別については,第1群から第5群へと男性が61%から76%まで増加していった.平均年齢は,第1群の61.8歳から第3群,第5群にかけて徐々に高齢化し,66.6歳,68.7歳となった.特に60歳以上の割合は第1群56.1%から5群80%へと大きく増加した(p<0.01).腫瘍占拠部位は,L領域が第1群では31.8%であったのが第5群では43.0%まで増加していった.腫瘍の肉眼型に関しては0-IIcが多く年代間で差を認めなかった.組織分化度については第1群では分化型優位が58.4%であったが第5群では86.3%にまで達する増加を認めた(p<0.01).また胃癌の背景粘膜における腸上皮化生スコアは第1群1.41から第5群1.95となり増加を示した.【結論】高齢者胃癌の割合が増加し,60歳未満の若年者胃癌が減少していることが示された.低分化型胃癌の占める割合が高い若年者胃癌の減少により(第1群では60歳未満の中で低分化型の占める割合が52.3%),分化型胃癌の割合が増加していると考えられた.また若年者におけるH. pylori陽性率の低下とともにH. pylori陽性者が高齢化し腸上皮化生の進行した背景粘膜からの分化型癌が増加していることが示唆された.
索引用語 胃癌, ヘリコバクターピロリ