セッション情報 パネルディスカッション17(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌の時代的変遷と将来展望―内視鏡医の視点

タイトル 内PD17-6:

当院における胃癌の組織型、進行度、年齢、部位の時代的変化の検討

演者 八木 一芳(新潟県立吉田病院・内科)
共同演者 中村 厚夫(新潟県立吉田病院・内科), 関根 厚雄(新潟県立吉田病院・内科)
抄録 【目的】高齢者の増加とH.pylori(HP)非感染者の増加が当院における胃癌の組織型、進行度、年齢、部位に変化をもたらしているかを検討した。【方法】(1)1996年と2010年に当院で診断治療された胃癌症例の組織型、進行度、年齢を比較検討した。(2) HP非感染者から発生している胃癌と食道胃接合部癌を検討した。HP感染者はRAC陰性で内視鏡的萎縮の所見を認める症例を、HP非感染者はRAC陽性で内視鏡的萎縮を認めず、培養、抗体、組織学的にもHP陰性と判断できる症例とした。【成績】1996年の胃癌症例は79人、2010年の胃癌症例は103人であった。組織型別には1996年は分化型50人(63%)、未分化型29人(37%)、2010年は分化型81人(79%)、未分化型22人(21%)と分化型胃癌の比率が増加していた。進行度と年齢を加えると1996年分化型M癌27人(平均年齢67歳)、SM以深癌20人(同68歳)、手術不能胃癌6人(同77歳)、未分化型M癌3人(平均年齢59歳)、SM以深癌16人(同59歳)、手術不能胃癌10人(同72歳)、2010年分化型M癌57人(平均年齢75歳)、SM以深癌19人(同75歳)、手術不能胃癌5人(同77歳)、未分化型M癌3人(平均年齢63歳)、SM以深癌7人(同66歳)、手術不能胃癌12人(同73歳)と切除可能な分化型胃癌の高齢化とM癌の著しい増加が特徴であった。(2)1998年から2010年までの検討でMまたはSMの癌では6例のバレット腺癌と1例の噴門部癌がHP非感染者であった。その他にHP非感染の噴門部進行癌を2004年に1例(63歳)、2011年に噴門部由来か食道下端の腺癌か不明な食道胃接合部癌(Siewert type2)を経験した(この2例は内視鏡所見と抗体でHP非感染と判定)。この2例は44歳、60歳男性で原発巣は2cm程度であったが多発肝転移を伴っていた。【結論】(1)高齢者の分化型胃癌、特にM癌が増加していた。未分化型胃癌は相対的に減少していた。(2)HP非感染者からは食道胃接合部癌が発生していた。これは欧米での現象と同様である。HP非感染者の増加によりこの領域の腺癌の診断を重視すべきと考えられる。
索引用語 胃癌, 食道胃接合部癌