抄録 |
【背景】近年、消化性潰瘍や胃癌EMR/ESD後を含めた各種疾患に対するH. pylori (HP)除菌後に早期胃癌を認める症例を少なからず経験し、今後、除菌例の蓄積に伴いさらに増加する可能性がある。これらの中には、画像強調・拡大観察を用いても診断困難な病変があるため、臨床病理学的所見や内視鏡像について検討を行った。【方法】各種疾患に対して除菌後、2007年3月~2010年の期間に39症例45病変の早期胃癌を認め治療を行った。複数の診断法にて除菌成功を確認し、除菌前から腺腫として認識されていた7例、未分化型癌3例、家族性大腸腺腫症1例を除いた分化型癌28症例31病変について、除菌対象疾患別に消化性潰瘍ほか(A群:22病変)と胃癌EMR/ESD後(B群:9病変)に分けて比較した。また、今回NBI拡大観察で、微小血管像が不明瞭で、表面微細構造の多様性や不規則性に乏しく、周囲粘膜と同様に明瞭なwhite zoneを認めたものを胃炎類似病変と定義して検討した。【成績】(1)除菌後癌発見までの期間(中央値, 月)はA(32; 6-156)がB(9; 5-28)より長かった。(2)大きさ(中央値, mm)はA(14; 4-55)がB(8; 4-34)より大きかった。(3)局在(L, M, U): A(7, 11, 4), B(5, 3, 1)、肉眼型: A(IIa:3, IIc:15, IIa+IIc:4), B(IIa:2, IIc:5, IIa+IIc:2)、組織異型度: A(tub1, low:12, tub1, high:5, tub2:5), B(tub1, low:7, tub1, high:1, tub2:1)、粘液形質(G, GI, I): A(5, 13, 4), B(2, 7, 0)に差はなかった。(4)胃炎類似病変(8病変)はA群に多く(A:7, B:1)、除菌後の期間(26; 15-156)が長く、MU領域小弯の同色~淡赤調、tub1, low病変が多かった。NBI拡大観察で周囲粘膜に類似した乳頭・顆粒状構造を示す6病変では境界診断が、腺管開口構造を示す2病変では癌の質的診断が困難であった。【結論】HP除菌後1年以上の低異型度高分化型胃癌の中には、炎症の改善と上皮の成熟分化に伴い、周囲粘膜に類似したNBI拡大所見を示し診断困難な病変があるため、今後さらに注目したい。 |