抄録 |
【目的】時代の変遷とともに,胃癌はHP感染胃癌から除菌後胃癌,HP未感染胃癌へと変化していくと考えられる。3群の胃癌の臨床病理学的所見,背景粘膜の特徴を明らかにする。【方法】HP感染胃癌(以下A群)206例,除菌後胃癌(B群)24例,HP未感染胃癌(C群)4例を対象とした。臨床病理学的所見(肉眼型,組織型,深達度,部位)と背景粘膜(萎縮の程度・拡がり,腸上皮化生の拡がり,胃癌の周囲の腸上皮化生の程度)を3群間で比較した。【成績】肉眼型はA群でIIcが59%,IIaが24%,Borが17%,B群で96%,4%,0%,C群で75%,0%,25%であり、A群に比べB群,C群はIIcが多かった。組織型はA群で分化型68%,未分化型32%,B群で92%,8%,C群で50%,50%であり、B群は分化型が多く、C群は分化型が自己免疫性胃炎(AMAG),未分化型が正常粘膜(nor)に発生していた。深達度がmの症例はA群で57%,B群で71%,C群で50%であり、B群ではmが多かった。部位はA群で前庭部が25%,角部が30%,体部が45%,B群で45%,17%,38%,C群で50%(nor),0%,50%(AMAG)であり、B群,C群は前庭部に多かった。萎縮の程度はA群でなし0%,軽度3%,中等度17%,高度80%,B群で0%,16%,42%,42%,C群で50%(nor),0%,0%,50%(AMAG)であり、萎縮の拡がりはA群でC0が0%,C1,2が0%,C3,O1が13%,O2以上が87%,B群で0%,13%,33%,54%,C群で50%(nor),0%,0%,50%(AMAG)であり、萎縮の程度・拡がりはA群,B群,C群となるにつれて徐々に弱くなった。腸上皮化生が1/2以上の症例は前庭部小弯でA群が76%,B群が71%,C群が0%,前庭部大弯で45%,41%,0%,体部小弯で72%,29%,25%であり、B群はA群に比べ体部小弯の腸上皮化生が弱かった。胃癌の周囲に腸上皮化生が1/2以上占める症例はA群が56%,B群が43%,C群が0%であった。【結論】除菌後胃癌はHP感染胃癌と比べて、IIc、分化型、m、前庭部に多く、HP未感染胃癌は正常粘膜ではIIc、未分化型、前庭部に、自己免疫性胃炎ではIIc、分化型、体部に多かった。HP感染胃癌、除菌後胃癌、HP未感染胃癌となるにつれて萎縮・腸上皮化生が弱くなった。 |