セッション情報 パネルディスカッション17(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会合同)

胃癌の時代的変遷と将来展望―内視鏡医の視点

タイトル 内PD17-12:

EMR時代とESD時代における早期胃癌治療の変遷-診断的ESDを含めた治療戦略の重要性-

演者 野中 哲(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
共同演者 小田 一郎(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科), 斎藤 豊(国立がん研究センター中央病院・消化管内視鏡科)
抄録 【目的】ESDの最大の利点は、詳細な病理組織学的診断が得られることであり、内視鏡治療か外科切除かの判断が難しい病変に対する診断的ESDも治療戦略の一環として認識されている。ESDの確立前後における早期胃癌に対する内視鏡治療の臨床成績を、外科切除との関連を含めて検討した。【方法】1990年から2005年の期間に、根治目的で外科切除が施行された2785症例と同じく内視鏡治療が施行された2469病変を対象とし、EMR時代(1990-1999)とESD時代(2000-2005)に分けて検討した。内視鏡治療において、EMR時代に施行されたESDやESD時代に施行されたEMR、遺残再発病変は除外した。‘over surgery’を内視鏡治療で治癒可能な病変(絶対適応病変;胃癌治療ガイドライン第3版)への外科切除と定義し、その頻度を検討した。内視鏡治療では、水平断端のみ陽性または評価不能による非治癒切除とリンパ節転移のリスクを有する非治癒切除に分けて、その頻度を検討した。【成績】‘over surgery’は、EMR時代の3.8% (52/1,369) から、ESD時代の0.2% (3/1,416) へ大幅に減少した (P<0.001)。内視鏡治療の非治癒切除率はEMR時代で36.9% (154/417)、ESD時代で17.0% (348/2,052) であった (P<0.001)。また、水平断端のみ陽性または評価不能による非治癒切除の割合は、EMR時代の26.1% (109/417) から、ESD時代の1.4% (29/2,052) へ有意に減少していた (P<0.001)。一方、リンパ節転移のリスクを有する非治癒切除の割合は、EMR時代の10.8% (45/417) から、ESD時代の15.5% (319/2,052) へ有意に増加していた (P<0.01)。【結論】診断的ESDを含めた早期胃癌に対する治療戦略は、‘over surgery’を有意に減少させるという結果をもたらした。ESD時代のリンパ節転移のリスクを有する非治癒切除率が高いのは、内視鏡治療か外科切除かの判断が難しい病変に対する診断的ESDが積極的に施行されたためと考えられる。
索引用語 早期胃癌, ESD