セッション情報 パネルディスカッション18(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

新重症度基準からみた重症急性膵炎の診療

タイトル 消PD18-2:

急性膵炎重症度判定基準の有用性に関する検討

演者 高山 敬子(東京女子医大・消化器内科)
共同演者 清水 京子(東京女子医大・消化器内科), 白鳥 敬子(東京女子医大・消化器内科)
抄録 急性膵炎の的確な重症度判定とそれに基づく適切な診療を目指し、2008年に厚生労働省により急性膵炎重症度判定基準(以下基準)が改訂された。今回我々は、新旧基準を比較し、その有用性について検討した。対象:2007年~2009年に当科で入院した急性膵炎92例。方法:新旧基準、Ransonスコア、APACHE-IIスコアを判定・算出し、手術移行、臓器不全・感染症などの合併症発症率につきretrospectiveに検討した。結果: 全92例の重症度は旧基準重症35例(38.0%)、中等症27例(29.3%)、軽症30例(32.6%)、新基準では重症21例(22.8%)、軽症(77.2%)で、新基準では重症例数が減少した。改訂前症例52例のうち、旧基準での重症は20例で、そのうち12例が新基準では軽症と判断された。改訂後症例40例のうち、新基準での軽症は28例で、そのうち4例が旧基準では重症と判定された。死亡例は1例のみで、感染性膵壊死などによる手術移行例はなかった。多臓器不全(人工呼吸器管理、血液濾過透析)、敗血症などの感染症合併症例は全例、新旧どちらの基準でも重症と判定された。旧基準で重症、新基準で軽症と判定された16例では、改訂により判定において比重が軽くなった項目や、削除された項目があることが判定が変わった理由であった(BE:31.3%、BUNまたはCr:12.5%、Ht:18.8%、総蛋白:50.0%、プロトロンビン時間:31.3%)。ただしこれらの症例では、入院期間を軽症例と比較しても有意な延長はなかった。新基準とRansonスコア、APACHEIIスコアを比較すると、ともに軽症より重症で有意にスコア高値を認めた(p<0.001)。旧基準では、どちらのスコアも軽症・中等症より重症で有意にスコア高値を認めたが(p<0.001)、軽症と中等症の比較では有意差は認めなかった。考察と結論:重症度判定基準改訂によって、より重症度の高い症例に絞って重症と判定し診療するようになったが、死亡例や合併症発症例などの重篤な症例は新基準でも重症と判定できていた。判定基準改訂でより適切な診療を施行できるようになったと考えられた。
索引用語 急性膵炎, 重症度判定基準