セッション情報 パネルディスカッション18(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

新重症度基準からみた重症急性膵炎の診療

タイトル 消PD18-3:

急性膵炎新旧重症度判定基準の比較と問題点の検討

演者 五十嵐 久人(九州大大学院・病態制御内科学)
共同演者 内田 匡彦(九州大大学院・病態制御内科学), 伊藤 鉄英(九州大大学院・病態制御内科学)
抄録 (背景)急性膵炎の診療においては発症初期の適切な治療が重要で、そのためには正確な重症度判定が必要である。急性膵炎の重症度判定基準は2008年に改訂された。(目的)新重症度判定基準の妥当性と問題点についてretrospectiveに検討する。(対象)2004年1月から2010年12月までに当科に入院した急性膵炎症例で、入院当時の基準で重症と判定された39症例。(結果)対象の年齢は中央値で53歳(13‐87)、男女比は28対11であった。成因はアルコール性(19例)、胆石性(8例)の順に多かった。全症例に対し新旧基準で比較すると、1)旧基準では、初日:stage 0/1/2/3/4の症例がそれぞれ1/9/21/6/2人、72時間以内:0/1/28/6/4人で重症例は38名であった。2)新基準では予後因子3点以上の重症例が初日で15人、72時間以内で22人であった。3)新基準のCT基準のみで重症と判定された症例は13名で、予後因子3点以上かつCT grade 2以上は初日で12名に認められた。4)旧基準で重症と判定された5名が新基準で軽症と判定され、新基準での重症1名が旧基準での中等症と判定された。5)旧基準でstage 3,4に相当する症例は、新基準では予後因子5点以上に相当した。死亡例は3名(7.7%)で、死因は基礎疾患によるもの2名、敗血症1名であった。更に、肝硬変合併や糖尿病昏睡合併など、基礎疾患が予後因子に影響を与えた症例が6名に認められ、新基準でCT grade 1と判定されながら基礎疾患や併発症のために予後因子で重症と判定された症例が3名に認められるなど、問題点も認められた。(考察)新基準では予後因子判定が簡便となり、CT基準を独立させ判定が行いやすくなった。重症な症例をより拾い上るが、重症度の高い旧基準におけるstage 3,4の症例は、新基準でも判定漏れがなく妥当な改訂と考えられる。一方CT基準と予後因子における重症度判定が合致しない症例を認め、重症な病態に軽症膵炎を併発した症例も重症膵炎と判定される場合がある、など課題も残っている。更に搬送基準についても考察し、新基準の問題点を検討する。
索引用語 急性膵炎, 重症度判定基準