セッション情報 シンポジウム15(消化器外科学会・消化器病学会合同)

下部直腸癌側方リンパ節転移に対する診断と治療方針

タイトル 外S15-10:

下部直腸癌に対する当院での腹腔鏡下側方郭清術の現状

演者 的場 周一郎(虎の門病院・消化器外科)
共同演者 黒柳 洋弥(虎の門病院・消化器外科), 隈本 力(虎の門病院・消化器外科)
抄録 海外において術前放射線治療(以後NART)の有効性が報告され、直腸癌標準治療となっている。本邦においても徐々にではあるが、NARTを導入する施設が増えている。さらにNagawaらの報告により、NARTが予防的側方郭清にとって代われる可能性が示されつつあるが、予防的側方郭清に関しては、現在施行中であるJCOG0212の結果を待たねばならない。当院では、T3以深またはN1以上の下部進行直腸癌に対してはNARTを行った後、腹腔鏡下直腸間膜全切除術(TME)を施行。側方郭清に関しては、予防的郭清は行わず、術前診断にて転移を疑ったものに対してのみ、腹腔鏡下に側方郭清を行っている。原則として、1mm間隔の造影CTおよびMRI検査にて長径7mm以上のリンパ節が存在する場合、転移陽性としている。NART後にリンパ節が縮小した場合でも側方郭清は省略しない。手術方法は、5ポート、10mm flexibleのハイビジョンカメラを使用し、直腸切除後に側方郭清を開始。郭清範囲は原則#263、#283としている。手術操作としては、最初に尿管を膀胱側まで剥離することで後の操作が安全になる。外腸骨動静脈を露出し、#283外側の剥離を行った後、閉鎖神経を同定。神経周囲はLCSを用いて剥離する。内腸骨動脈から分岐する上膀胱動脈を確認し、#283の内側縁とする。閉鎖血管は#283転移陽性の時は合併切除する。#263への転移を強く疑う症例に関しては、内腸骨動脈を合併切除し郭清する。転移リンパ節からの直接浸潤が無ければ、骨盤神経叢は温存できる場合も多い。2010年4月から2012年3月までに16例に腹腔鏡下側方郭清術を行った。16例中13例にNARTを行っており、術式はAPR4例 LAR9例 ISR3例であった。陽性率は全体で6/16で37.5%、10mm以上とすると4/6と67%であり、逆に10mm未満の転移は2例存在した。術後合併症として、静脈血栓症を1例、骨盤内膿瘍を2例に認めた。観察期間はまだ短く、不十分ではあるが、再発は現在のところ認めていない。
索引用語 腹腔鏡下手術, 側方郭清術